永田豊隆
午前6時過ぎ、インターホンの音で眠りから覚めた。
「奥さまが倒れていたものですから……」。玄関を開けると、見知らぬ男性が、泥酔した妻に肩を貸している。私は丁重に礼を述べながら、心の中で「またか」とつぶやいた。5年ほど前のことだ。
2009年ごろから妻はアルコールに依存するようになり、たびたびこんなことが起きた。
はじめは近所のコンビニや居酒屋でビールを飲み、ほろ酔いで帰ってくる程度だった。主治医も私も飲酒をやめるよう注意した。ただ、苦しさから酒に頼る気持ちはわからなくはないし、私はそれほど大きな問題と認識できなかった。
次第に妻は、アルコール度数の高い日本酒を口にするようになった。カップ酒を自分の部屋に隠し、昼夜問わず飲み続ける。私が家を出る朝も、帰宅する夜も、深酔いして寝込んだままだ。家事ができず、台所とリビングは散らかり放題になった。
私が日常生活の介助をせざるをえなくなった。ふらつく妻を起こして着替えさせ、家の中を片付ける。シャワーを浴びさせ、嘔吐(おうと)物を処理する。彼女がもうろうとしながら通販番組で高額な商品を注文するため、その都度、解約や返品の手続きをとった。いちばん難儀したのは、コンタクトレンズを外すことだった。
後に知ったのだが、こうして家…
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朝日新聞社会部