1978年に北朝鮮に拉致され、後に脱出した韓国の女優、崔銀姫(チェウニ)さん(91)が16日、死去した。韓国メディアによれば、5年前から腎臓透析を受けていた。

 北朝鮮の映画振興を狙った金正日(キムジョンイル)総書記が、韓国のトップ女優だった崔さんと夫の映画監督、申相玉(シンサンオク)さんの拉致を指示。78年に2人が滞在先の香港で相次いで行方不明になった後、北朝鮮に拉致されたことが分かった。申監督は北朝鮮で怪獣映画「プルガサリ」など映画7本を撮影した。

 86年に夫妻で外遊先のウィーンの米国大使館に駆け込み、米国に亡命。89年に11年ぶりに帰国した。崔さんは後に、北朝鮮の拉致機関の実態などについて日本政府に証言した。申監督は2006年に死去した。

 数年前、崔さんと映画祭で同席した知人によると、崔さんは北朝鮮脱出に備えて金総書記の記録を集めることを考え、カバンに録音機を隠し持ったという。また夫妻が招かれた会食で、拍手する部下たちを見ながら金総書記が、崔さんに「これは全部ウソです」と冷静に耳打ちしたエピソードなどを紹介したという。(ソウル=牧野愛博)