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 フィリピンの夜の町を歩き、ドゥテルテ大統領が掲げる強硬な麻薬撲滅作戦の名のもとに人が殺されるむごさを伝え続ける写真家がいる。フィリピン人のラフィ・ラーマさん。国内外で写真展や講演活動を行い、「殺人は麻薬問題の解決にならない」と訴えている。

 タイの首都バンコクで昨年12月、ラーマさんの作品も展示された「ナイトシフト」(夜勤)と題した写真展が開かれた。フィリピンでは麻薬犯罪者の殺害をもいとわない強硬な撲滅作戦のもとで多くの人々が殺されている。写真展では遺体が横たわる現場、葬儀で悲しみに暮れる人々を撮影した作品が並んだ。

 ラーマさんは、ドゥテルテ氏の大統領就任直後の2016年7月から、フィリピンの全国紙インクワイアラーの記者として毎日午後9時から午前4時まで警察署に張り込み、現場に駆けつけてきた。

 「最もむごかった」という男性の遺体は、ビニールテープを巻かれた顔に、笑った目や口のいたずら書きがされていた。「私は密売人 まねするな」。多くの遺体のそばに警告めいた紙切れが置かれていた。

 そんな中、ラーマさんが撮った1枚が世界を揺さぶった。やじ馬が囲む路上で、夫の遺体を抱く女性。新聞に載ると、写真はキリストの亡きがらを抱く聖母像を意味する「ピエタ」と呼ばれるようになった。ラーマさんは「『殺されて当然の犯罪者の死』が、生身の人間に起きた悲劇として認識され始めた」と振り返る。同年8月には米ニューヨーク・タイムズ紙にも掲載された。

 「芝居がかったあの写真」。ドゥテルテ氏が演説で「ピエタ」に言及するのを聞き、ラーマさんは思った。「一番伝えたかった人に伝わった」

 17年5月に新聞社を退社。撮影を続けながら、米コロンビア大など国内外の大学や人権団体が開く講演会で思いを伝えている。バンコクの写真展では、タイでも「麻薬戦争」が起きた過去に触れる意見も出て、「いかに解決すべきか」が議論された。

 フィリピン政府によると、16年7月~18年2月8日に、警察の麻薬捜査中に殺された人は4021人。国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチは、身元不明の犯人による殺害も含む総数は1万2千人以上とみている。(ハノイ=鈴木暁子)