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 日本政府や企業との経済協力対話などのために来日した国連工業開発機関(UNIDO)の李勇(リーヨン)事務局長が17日、朝日新聞との会見に応じた。UNIDOは各国政府や企業に、途上国への技術移転や産業振興のための投資を促したり、現地のビジネスパートーナーを紹介したりする役割を担う。開発支援の分野での日本の役割を聞いた。

 ――日本とUNIDOの協力では、中東やアフリカ地域でのプロジェクトが多くあります

 日本政府は今年新たに、中東・アフリカの8カ国での協力事業に計520万ドル(約5億6千万円)以上の拠出を決めた。事業の中には、内戦が続くシリアの国内避難民や難民の能力開発もあり、大きな貢献だ。必要とされているのは職業訓練と雇用の創出。これが人々の希望も生む。特に若い世代や女性といった社会的に弱い立場にある人への支援が求められており、日本政府にもこうした人道開発支援を打ち出してもらっている。今後、現地の状況を見極めて進められるだろう。

 ――日本企業へも協力を呼びかけていますが、企業にとっては、開発支援でありつつ「ビジネス」としてのメリットも必要になります。両立は可能でしょうか

 民間企業が途上国に進出すれば、そこにビジネスの種が生まれる。技術移転や職業訓練で貢献できると同時に、企業側は現地市場へアクセスもできるようになる。日本企業には多くの例がある。医療機器を製造する富士フイルムは、エチオピアで医師を育て、将来的に機器を使う顧客にもなってもらうことをめざしている。電力ケーブルを扱う矢崎総業のグループはモロッコに3工場をつくり、1万人の雇用を生んだ。矢崎側も輸出が増えるというメリットを享受している。

 ――日本企業の強みはどこにありますか

 環境技術での貢献が大きい。アフリカで、前川製作所はエネルギー効率の良い産業用冷却器を、住友電気工業は最新の太陽光発電設備を広めている。野村興産は、かつての日本が経験した(水俣病などの)水銀汚染を除く技術で協力している。モロッコは、2030年までに総発電能力に占める再生可能エネルギーの割合を52%にするとの野心的な目標を立てているが、住友電工の技術の進化は加速している。こうした技術を移転できれば、52%は野心的な数字ではないかもしれない。

 ――途上国の産業化や技術移転は、国連が掲げる2030年までの持続可能な開発目標(SDGs)の目標9としても位置づけられています

 今回の来日で日本の若者と議論する機会があった。目標9について説明すると若者はとても積極的で、科学や工業の分野で自分たちが学んだことを生かしたいと考えているようだった。日本にはSDGsに貢献できる若い才能が集まっている。こうした人たちが、国際社会と密接に結びついていってくれればうれしい。