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エリザベト音楽大学に入学した 橋本怜子さん(70)

 60年近く親しんできたピアノを学び直そうと、今春、エリザベト音楽大学(広島市中区)に70歳で入学した。

 ピアノを始めたのは、呉市で暮らしていた小学6年生のころ。父がふすまの桟を切り、練習用の木の鍵盤を作ってくれた。「音は鳴らなくても、指の動きを確認できるだけで十分うれしかった」。上達して好きな曲を弾けるのが楽しくて、夢中になった。

 「ピアノ科で東京の大学に入るのは狭き門だ」。指導者から言われ、高校からは声楽を専攻。国立(くにたち)音楽大学に進学した。ただ、1人で様々なハーモニーを奏でられるピアノへの未練を捨てきれず、半年あまりで中退した。

 すぐに中国短期大学に入り、ピアノを専攻。卒業後、指導者となった。約10年前には、夫の転勤で自宅を構えた福井県敦賀市で、ボランティアのコンサートグループを結成。音楽経験のないお年寄りが、練習してうまくなる姿を見て、刺激を受けた。

 3年前、ふるさと呉で立ち上げたコーラスグループの活動を通じて出会った、エリザベト音大講師の宮入友子さんに師事。月に1度、約450キロ離れた敦賀から広島を訪れ指導を受けた。難易度が高く、挑戦できなかったショパンの「英雄ポロネーズ」を1年で暗譜できるように。もう一度、一からピアノを勉強したい、との思いが募った。「70歳でも受験できるの?」

 この春、演奏学科に合格。短大での経験があるため2年生に編入した。夫を敦賀に残し、広島市内に部屋を借りて半世紀ぶりの学生生活を送る。持ち前の行動力を知る夫も今回の決断には驚いたが、背中を押してくれた。「音楽理論も英語もパソコンもできない。でも、この年になって学べること自体が楽しくて仕方ないんです」(原田悠自)

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 1948年、竹原市生まれ。中国短期大学音楽科(当時)を卒業後、カワイ音楽教室の講師を20年間務めた。その後は、ピアノやコーラス、ハーモニカなどのコンサートグループを結成。各地で活動を展開する。