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 方言はいい。気持ちが率直に表現される。「腹わた言葉」と呼ばれる所以(ゆえん)だろう。

 外来で「ゾがでました」、「ケンビキでしょうやあ」とくたびれ果てた患者さん。休息と睡眠を十分に、と指示する。処置室で「母はキズイ者でイチガイ者で」と息子さん困り顔。自分の意見を持ったしっかり者のおばあさん、ということのよう。還暦過ぎた息子さん、90歳過ぎの父親を車椅子に乗せて病室へ入院に。「毎晩騒いでキャアリイ(うるさい)です。うんこしっこ漏らすしイジルし、ヒンガワリイ」。負けじと父「ナニイイ? ダラズー。わしゃあそがなことすらあせん。ねきに来い!」と腕を上げんばかり。「オットロシー」と息子さん一歩引き、「だでなあ」と一緒に来た姉に一言。姉、北海道北見市なら「そだねー」のところ「そうだがあー」。

 かねがね感じてることがある。鳥取方言の特徴は二つ。一つは、間が抜けてるところ。もう一つは、否定語のトーンが強いところ。例えばAさんがBさんに何かを申し出たような時、全国的には「ごめんなさい」と否定。鳥取弁は「いけん!」。拒絶度、極めつき。好きか嫌いかと聞かれ、全国的なら「びみょう」と答えるような時、鳥取弁は「すかん!」と一発。

 ゾロゾロと病室に見舞客、「えらいか?」「食べたいもんないか?」「欲しいもんは?」「行きたいとこは?」「元気だしてー」としゃべくりまくる時、全国的には「ちょっと抑えて抑えて」。鳥取弁は「よだきい!」。最高級の拒否語。「いだきい」とも言う。ちょっと誇張しすぎたか。

 あったかい言い回しもある。夕方のあいさつ。「ばんなりました」「ばんなりましたなあ」とのどか。でも、最近あまり聞かないなあ。

<アピタル:野の花あったか話>

http://www.asahi.com/apital/column/nonohana/(アピタル・徳永進)

アピタル・徳永進

アピタル・徳永進(とくなが・すすむ) 野の花診療所医師

1948年鳥取市生まれ。京都大学医学部卒業。京都、大阪の病院・診療所を経て、鳥取赤十字病院の内科医に。2001年12月、鳥取市内にてホスピスケアのある有床診療所「野の花診療所」を始め、さまざまな死の形を臨床から報告。鳥取市にセミナーハウス「こぶし館」を建築し26年になる。