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チャイナ・スタンダード(世界を席巻する中国式)

 北京のコンビニでコーラを買う。スマートフォンを出し、対話アプリ「微信(ウィーチャット)」の決済機能でさっと支払う。街で現金はめったに使わない。

 個人情報は悪用されないか。口座のお金が消えていたら……。不安もよぎるが、この生活様式を捨て去るのは難しい。微信は世界で10億人が使い、その決済システムは日本でも導入の動きがある。中国発のイノベーションが世界に押し寄せている。

 鄧小平が改革開放にかじを切って40年。貧困国だった中国は世界第2の経済大国になった。軍事やサイバー、宇宙などの技術でも先進国に引けを取らない。ヒト・モノ・カネ、さらには文化や価値観まで中国的なものが世界にあふれ出す。

 私たちには受け入れがたい動きもある。自由や民主といった価値観より、「国家の安定」を優先し統制を強める中国式の統治が一部の国で模倣されている。欧州でさえ、中国の投資や中国の巨大市場の魅力から人権などをめぐる中国批判をはばかる空気が漂う。

 背景には、歴史的な国際関係の地殻変動がある。

 「米国第一」を掲げるトランプ政権下で、米国の国際的な影響力は退潮傾向だ。中国共産党幹部は「トランプが大統領でよかった。『米国第一』に固執するほど国際的地位は弱まり、中国が発展する空間が広がる」と本音を明かす。

 冷戦が終わり、社会主義や全体主義は淘汰(とうた)されるとだれもが信じた。2001年に中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した時、自由経済や民主主義など欧米主導のグローバルスタンダードに中国も寄り添うとだれもが感じた。だが、その期待ははずれた。中国は今、独自路線で米国をもしのぐ「社会主義現代化強国」を目指している。

 欧米の影響力が陰るなか、望むと望まざるとにかかわらず、中国的なモデルがスタンダードになるかもしれないという動きが様々な分野に現れてきた。私たちは、欧米から中国に覇権が移る歴史的転換を目にしているのだろうか。新たな世界秩序をめぐる相克を、各地から報告する。(中国総局長・西村大輔)

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