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 北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が27日の南北首脳会談で、核実験場を5月中に廃棄し、内外に公開する考えを示した。国際社会との間で、非核化について何度も約束しながら破棄してきた北朝鮮。米朝首脳会談につなげる「カード」のひとつに過ぎないのか。

具体的手法、なお不明

 北朝鮮は、南北会談を前にした20日の党中央委員会総会で咸鏡北道(ハムギョンブクト)豊渓里(プンゲリ)の核実験場の廃棄を決めた。朝鮮中央通信の英語版は「dismantle」という用語を使い、凍結や無能力化ではない、永久廃棄だと強調した。

 韓国大統領府によれば、正恩氏は27日の会談で閉鎖の意義を強調。非核化の検証に積極的に協力する考えを示したとされる。

 だが、実験場廃棄の具体的な方法は明らかになっていない。過去の核実験データなどが公開されない限り、実態に迫るのには限界が伴う。

 北朝鮮は29日現在、寧辺(ヨンビョン)の核関連施設の運転を停止していない。ウラン鉱山などでも操業が続いている模様で、新たな核物質や核兵器の生産を止める凍結段階にすら至っていない。

爆破した冷却塔、別施設で復旧

 北朝鮮は過去、国際社会との間で何度も非核化に合意した後、破棄してきた。

 1994年の米朝枠組み合意では寧辺の核関連施設の運転を凍結し、国際原子力機関(IAEA)の監視下に入った。だが2002年にウラン濃縮活動が明らかになり、IAEA要員を追放して凍結を解除した。

 日米韓など国際社会は、この教訓から07年2月の6者協議では、凍結よりも強い措置で復旧までに6~12カ月かかるとされる無能力化措置を経て廃棄に至ることで合意。北朝鮮は08年6月、米政府当局者や海外メディアを招いて寧辺にある原子炉運転のための冷却塔を爆破して見せた。

 ただ北朝鮮は、申告した核開発の実態に対する検証方法で米国などと対立。08年9月には寧辺核関連施設の復旧作業に着手した。冷却塔の代わりに水を使って冷却する施設を作ったほか、ウラン濃縮施設や軽水炉の建設も始め、合意はまたも崩壊した。

地下施設、検証難しく

 さらに北朝鮮には、膨大な数の地下施設がある。1999年には平安北道(ピョンアンブクト)金倉里(クムチャンリ)で地下施設を使った核開発疑惑が発生。米朝交渉の末に、米調査団が現地を訪れたが、何も発見できなかった。情報関係筋によれば、米韓は当時、情報衛星が撮影した写真から、金倉里に大量の物資や人員の出入りを確認していた。北朝鮮がウラン濃縮施設を建設しようとしたが、疑惑が発生したため、慌てて撤収したと結論づけたという。

 6者協議に携わった韓国の元政府当局者は「結局、北朝鮮が協力しない限り、完全な非核化は実現できない」と語る。

 北朝鮮関係筋は「金正恩委員長は核を捨てられないだろう。交渉が行き詰まれば、いつでも態度を変えるし、最後まで核を隠そうとするだろう」と語った。(ソウル=牧野愛博)

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 〈豊渓里核実験場〉 北朝鮮北東部の咸鏡北道豊渓里(ハムギョンブクトプンゲリ)にある地下核実験場。1980年代末に整備が始まり、地下に多数の坑道が張り巡らされているとされる。北朝鮮が行った計6回の核実験は全て同実験場で行われた。昨年9月に行われた6回目の実験後、付近で地震が発生し、中国の研究チームが実験場の崩落が原因とする分析結果を発表。山崩れも発生し、韓国の専門家の間では「これ以上の実験は放射能漏れなどを起こし、無理ではないか」との指摘もあがっている。

 米ジョンズ・ホプキンス大の研究グループ「38ノース」は今年3月、人工衛星の画像分析から、坑道の掘削作業のペースが落ちているなどとし、「活動が著しく鈍化している」との見方を示している。