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 19世紀後半から20世紀初めにかけて中央アジアを探検したスウェン・ヘディン(1865~1952)が、チベットで描いたスケッチの模写60枚が京都大学地理学教室でみつかった。その模写や原画、現地の風景を収めた「探検家 ヘディンと京都大学」(京都大学学術出版会、本体6800円)が刊行された。

 模写は2014年、京大大学院文学研究科の田中和子教授(人文地理学)が、教室の資料整理中に古い2通の封筒を発見。寺院や風景、人物などをいきいきと描いた水彩画や鉛筆画、ペン画が挟み込まれていた。

 田中さんによれば、人文科学研究所の池田巧教授(チベット言語学)に相談したところ、模写の大半が「トランス・ヒマラヤ」などヘディンの著作の挿絵と一致し、その多くが第3次チベット探検の際に描かれていたことがわかった。

 ヘディンは、第3次探検を終えた帰途の1908年11~12月に来日。京都帝国大で講演会と展覧会を開き、スケッチなど計108点を展示していた。今回みつかった模写は、当時創立間もなかった関西美術院で学んでいた画学生4人が手がけたものとみられる。

 スウェーデンの民族学博物館で調査したところ、60点の模写のうち49点は原画が確認されたが、11点については今回の模写しか残されていないこともわかった。田中さんは「京都で行われたヘディンの絵の模写は、世界でも大変珍しいものです」と話す。

 新刊書には、ヘディンが京都滞在中に大谷探検隊を組織した西本願寺の大谷光瑞(こうずい)門主や、東洋史学者の内藤湖南、地理学者で湯川秀樹の父の小川琢治らとの交流の様子や、大阪・四天王寺に当時あった世界最大の釣り鐘を見たヘディンが、鐘をつけなかったことを嘆いたエピソードなども紹介されている。田中さんは「東京では、主に政治家や官僚が迎えたのに対し、学者や芸術家、文化人が歓待したところに京都らしさが表れている。1世紀前の知られざる学術交流の一端がうかがえる」と話す。(久保智祥)

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 〈スウェン・ヘディン〉 スウェーデンの地理学者、探検家。中央アジアを探検し、タクラマカン砂漠に栄えた楼蘭(ろうらん)遺跡を発見。塩湖・ロプノルを「さまよえる湖」とする説を唱えた。