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 「我が国十何万の精神病者は実にこの病を受けたるの不幸の外(ほか)に、この国に生まれたるの不幸を重ぬるものというべし」――精神疾患のある人々が置かれた状況を100年前にそう表現した、精神科医・呉秀三(くれしゅうぞう)(1865~1932)の足跡を追うドキュメンタリー映画「夜明け前 呉秀三と無名の精神障害者の100年」が完成した。6月2日から東京・渋谷のアップリンク渋谷で一般公開される。

 呉秀三は東京帝国大学医科大学(現東京大学医学部)教授、東京府巣鴨病院(現東京都立松沢病院)の院長などを務め、日本の精神病学の基礎を築いた人物だ。

 広島藩医の3男として江戸・青山に生まれ、帝国大学医科大学卒業後にオーストリアとドイツに留学。帰国後、病院で手かせや足かせ、鎖などの身体拘束具の廃止、開放的な処遇などに取り組んだ。また、当時の精神障害者の多くが自宅の座敷牢に閉じ込められていた「私宅監置」の実態も調査。6年かけて1府14県にあった364の監置室を視察、監置されていた361人について調べた。1918年に報告書「精神病者私宅監置ノ実況及ビ其統計的観察」をまとめた。

 報告書には監置室の見取り図や衛生状況、収容期間、精神障害者や家族の様子などが細かく記されている。格子に囲まれた監置室や暗い部屋に裸で横たわる精神障害者の写真なども収録。不衛生さ、衣食の提供や監護の不足などを報告した。

 当時、日本では精神障害者を収容する公的施設が不足。不法監禁などを防ぐために1900年に「精神病者監護法」が制定され、行政の許可を得れば精神障害者を合法的に私宅監置できた。呉は私宅監置の状況を厳しく批判、精神疾患を患うと同時に日本に生まれた患者たちの「二重の不幸」を指摘。さらに「精神病者の救済・保護は実に人道問題にして、我が国目下の急務と謂(い)はざるべからず」と記した。呉の精神は、50年の精神病者監護法廃止につながった。

 映画は、精神科医や精神医療史…

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