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 米トランプ政権は31日、鉄鋼・アルミ製品への高関税措置の対象から一時的に除外していた欧州連合(EU)とカナダ、メキシコに対し、6月1日から関税をかけると発表した。鉄鋼には25%、アルミに10%それぞれ関税を上乗せする。EUやメキシコはすぐに報復措置の実施を表明。米国は中国に加え、EUなど同盟国との間でも貿易摩擦が激化することが確実となった。

 ロス米商務長官は「EU側は関税免除を通商協議の条件としてきたが、受け入れられない」と指摘。メキシコやカナダについても、北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉が「我々が望むより長くかかった」として関税をかけることにした。

 安全保障を理由にした関税は、対象が際限なく広がり、報復合戦を引き起こしかねない。ただ米側は、大統領の裁量で再び関税を免除する余地も残しており、引き続き交渉の「カード」とする構えだ。

 EUの行政トップを務めるユンケル欧州委員長は31日、ロス氏が関税発動を発表した直後、対抗措置をとる考えを明らかにした。欧米メディアによると、EUは対抗措置として、工業製品から農産品まで、幅広い貿易品に25%の関税を課す案を軸に検討している。メキシコ経済省も31日、「米国の決定はとても残念で容認しがたい」との声明を出し、鉄鋼製品のほか農産物など幅広い品目に対して、同等の措置を講じると発表した。

 米国は3月下旬、安全保障を理由にした鉄鋼・アルミ製品への新たな高関税を発動。ただ、NAFTAの再交渉を進めているカナダ、メキシコとともに、貿易不均衡に不満を募らせているEUについては、一時的に対象から外し、通商協議での妥協を迫る取引材料の一つとしていた。(ワシントン=青山直篤、サンパウロ=岡田玄 ワシントン=青山直篤)

EU対抗措置、関税25%軸に検討

 「全く受け入れられない。世界の貿易にとって悪い日だ」。EUの行政トップを務めるユンケル欧州委員長は31日、米国がEUに鉄鋼・アルミ製品の関税措置の対象に含めると発表した直後、対抗措置に踏み切る方針を打ち出した。

 欧米メディアによると、EUは対抗措置として、工業製品から農産品まで幅広い貿易品に25%の関税を課す案を軸に検討している。世界貿易機関(WTO)のルールにそって対抗措置を取る手続きを始めている。

 メキシコ経済省も31日、米政府による関税措置への対抗として、鉄鋼製品のほか農産物など幅広い品目に対して同等の措置を講じると発表。メキシコ経済省は「米国の決定はとても残念で容認しがたいものだ」とした。

 米国は中国にも知的財産を理由に関税を発動する方針を公表。中国も対抗措置を準備するなど、つばぜり合いが続いている。米EUや米中など主要経済圏で貿易摩擦が過熱しそうだ。

 米政権は、安全保障を理由とした鉄鋼・アルミ製品への関税を、経済や安全保障面で関係が深いEUやメキシコ、カナダに拡大。世界の貿易体制に与える影響は広範囲に及びそうだ。

 米国は3月に日本などを対象に関税措置を発動したが、EUなどは一時的に除外。米国は自国に有利な貿易条件を得ようとEUに対米輸出制限を求めるなどして交渉を続けてきたが、関税適用に踏み切った。

 安全保障を理由とした関税措置はWTOのルールでも例外として認められている。ただ、各国とも適用を控えてきた。対象が際限なく広がる可能性があり、報復の応酬が懸念されるためだ。ロス米商務長官は「安全保障という用語は、軍事的な意味にとどまらない」と指摘。今後も引き続き通商協議の取引材料として使う姿勢を示した。(ワシントン=青山直篤、ワシントン=青山直篤、パリ=津阪直樹)

日本、保護主義の拡大懸念

 米国の保護主義的な通商政策の対象は今後、鉄鋼・アルミ製品以外に広がる可能性がある。とりわけ日本とEUが神経をとがらせるのは、トランプ米大統領が検討を指示した輸入車への高関税措置だ。

 日本の2017年の対米輸出額は鉄鋼・アルミ製品の約2100億円に対し、自動車は部品も含め約5・5兆円。主力産業の自動車に高関税がかけられれば、経済に与える影響は鉄鋼・アルミ製品の比ではない。

 世耕弘成経済産業相とEUのマルムストローム欧州委員は31日、経済協力開発機構(OECD)の閣僚会合などがあったパリで会談。米国が検討する自動車への関税措置について「世界市場に深刻な混乱を招き、WTOルールに基づく多角的貿易体制を崩壊させかねない」との懸念を共有した。そのうえで、米国との協議で日EUが密接に協力していく方針で一致した。

 世耕氏は同日、日米EUの3者会合で、米国の保護主義的措置について「極めて遺憾」とする懸念をライトハイザー米通商代表部(USTR)代表に直接伝えた。しかし、ライトハイザー氏は「留意する」と述べるにとどまり、日EUの懸念への具体的な回答はなかった。世耕氏は会合後、記者団に「他国にも連携を呼びかけていく」と述べ、各国で米国に輸入車への関税措置をやめるよう働きかける考えを示した。

 日本にとっては輸入車の高関税措置の検討が、6月中旬以降に日米間で始まる新たな通商協議(FFR)の交渉材料に使われる懸念もある。政府関係者は「『自動車カード』を握られていると、まともな交渉にならない」と苦慮する。(南日慶子、パリ=寺西和男

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