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 暴走するトラックから主人を守り、左前脚を失った盲導犬「3本脚のサーブ」。戌(いぬ)年の今年は死後30年の節目を迎える。全国で盲導犬が不足しているなか、中部盲導犬協会(名古屋市港区)は在りし日のサーブの姿を伝え、盲導犬普及につなげたい考えだ。

 1982年1月、岐阜県美並村(現・郡上市)の雪道を歩いていた盲導犬のサーブと飼い主の亀山道夫さん(72)に、暴走するトラックが突っ込んできた。サーブ(雌、シェパード)はハーネスを振り切ってトラックに飛び込み、8メートル以上飛ばされて左前脚を失う大けがをした。亀山さんは、ほぼ無傷だった。

 「あんなに立派な盲導犬と出会えたことは本当に幸せでした」。現在、郡上市の介護施設で暮らす亀山さんの部屋には、サーブと撮影した写真が飾られている。「ありがとう」と、毎日欠かさず声をかける。事故後、サーブは盲導犬の活動から引退し、88年6月13日に息を引き取った。

 事故がきっかけで、盲導犬は視覚障害者の身体の一部、と理解されるようになった。公共施設に同伴できるよう定めた法律の制定にもつながった。その後、85年には米国テキサス州の名誉州犬となり、当時の中曽根康弘首相から功労賞も受賞。絵本の題材や小学校の授業の副読本にもなり、盲導犬の活動を広く伝えることに貢献した。

 亀山さんは「サーブがいなければ、今も盲導犬に対する理解は得られていなかったかもしれない。こんなにすごい犬がいたことを忘れないでほしい」と願う。そして「サーブは、今も私の心の中で生きています」と語った。

没30年の今年、追悼イベント

 中部盲導犬協会の入り口にはサーブの銅像が設置され、職員のジャンパーの胸元にもサーブのイラストが描かれている。身を犠牲にして主人を守ったサーブは、今も協会の象徴だ。

 厚生労働省の2016年度の調査によると、全国の視覚障害者は約34万人、うち約11万人は全盲と推定される。一方、同協会によると、盲導犬は全国で約1千頭ほどで、育成が急務となっている。

 同協会は毎年8頭前後の盲導犬を育てているが、1頭あたり約500万円の育成費用が必要という。育成費のほとんどは募金でまかなっており、盲導犬への関心を高めることが課題だ。

 死後四半世紀以上が経ち、サーブを知らない世代も増えた。協会は名古屋市内の小中学校などで出前授業を毎月開き、サーブの功績の話などをしている。授業を聞いた中学生が盲導犬育成のための募金活動に参加するなど、若者の関心は徐々に高まっている。

 サーブが死んだ6月には追悼イベントを開く予定だ。中高生らも招いて、募金活動も実施する。

 田嶋順治・同協会常務理事(55)は「死後30年の節目が『戌年』で不思議な縁を感じる。サーブの故郷・名古屋から1頭でも多くの盲導犬を育成したい」と話した。(井上昇)