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 企業などが不祥事を起こすと、中立的な「第三者委員会」を設置し、原因の調査結果や再発防止の提言を報告書にまとめるケースが少なくありません。弁護士らでつくる「第三者委員会報告書格付け委員会」は、第三者委の報告内容を検証し、結果を公表しています。企業や官庁で相次ぐ不祥事をどう見ているのか。格付け委の委員長で、企業の不祥事と長年向き合ってきた久保利英明弁護士に話を聞きました。

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 ――大企業や中央省庁で情報改ざんなどの不祥事が続いています。

 日本全体が劣化している。財務省や自衛隊、大企業でも「隠蔽(いんぺい)する」「無いことにする」「ウソをつく」「偽装をする」などの行為ばかり。国民や株主をなめているとしか思えない。国中でガバナンスが壊れていると感じる。

 ――たとえば財務省の公文書改ざんやセクハラ問題への対応はどう見ますか。

 財務省の顧問弁護士を使った調査で済ませるなどナンセンスだ。麻生(太郎)財務相は国民目線で「第三者委員会に調査を頼む」と言うべきだった。過去、不祥事対応での失敗例の一つに、東京都知事だった舛添要一氏の政治資金問題(2016年)がある。別荘の往復に公用車を使うなどしたことについて、自分が頼んだ弁護士を連れてきて「違法性はなく、問題はない」と会見したが、もっと国民を怒らせてしまい、辞任に追い込まれた。最初から第三者委に調べさせ、疑わしい支出のお金をすべて返還するなどの態度を示していれば知事を辞めなくても済んだのではないか。

 ――第三者委が本当に公正な調査をするのか、という疑問も残ります。

 第三者委ができてからもまだ何か隠そうとする組織がある。社外取締役を中心に、公正中立な弁護士や専門家を選んで厳正な第三者委をつくり、当を得た再発防止策を打ち出せば、「あの会社は問題があったが、本性は悪くない。本気で直そうとしている」と周囲は評価する。「どんな第三者委員会をつくるか」が、将来見込みのある会社か、それともダメな会社かを見極めるメルクマールになるのではないか。

 ――格付け委は、多くの企業の第三者委報告に厳しい評価を下しています。

 大規模なデータ改ざんを起こした神戸製鋼所の場合、格付け委員会の評価は「評価に値せず」のFが6人、残る3人はFの次(下から2番目)に低いDの評価だった。神鋼は、依頼者と弁護士の間のやり取りを外部に公表しない「秘匿特権」があり、「報告書の公表は特権を放棄するリスクがある」と言って報告書の原本を出さなかった。だが、調査した弁護士が公正な第三者というのなら、本来は刑事弁護人のみに認められる秘匿特権の対象にならないはずだ。

 ――第三者委がうまく機能したケースはありますか。

 第三者委が厳しい方が、最終的に会社は救われる。私が第三者委の委員長を務めた牛丼の「すき家」の過酷労働問題(14年)への対応はまさにそうだ。

 すき家を展開するゼンショーホールディングス(HD)の当時の会長から委員長を頼まれたとき、私は「(報告書は)厳しく書きますよ」と言った。すると会長は「構わない」と言い、委員の人選もすべて任された。社長から社員に対し「仕事より優先して調査に協力するように」と指示も出た。弁護士や労働問題の専門家も入れた委員会をつくり、労働の実態を聞く社員アンケートは、秘密を守るため、会社ではなく第三者委にそのまま送ってもらった。

 ゼンショーでは「24時間365日店を閉めない」という経営者の理念が先行し、社員は明らかに働き過ぎだった。第三者委は「1人勤務態勢(ワンオペ)を早急に解消するべきだ」などと提言した。それを受け、ゼンショーでは店舗あたり2人ずつ採用できない店については深夜営業をやめた。当時あった2千店すべてを本社がチェックするのは無理だとして1社あたり300店舗以下とする分社化も進んだ。過酷労働問題でゼンショーの株価は大きく落ちたが、第三者委員会の報告書が出た後、再びじりじりと上がり、いまは問題が起こる前の約2倍になっている。第三者委が公明正大に調査をやり、企業がすべて受け入れるとなると、世の中は「それなら良くなる」と評価するようになる。

 ――第三者委の調査報告書が良いものか、そうでないかを見抜くポイントは。

 まずは「わかりやすい」「読みやすい」かどうかが一番。報告書はすべてのステークホルダー(株主、従業員、お客など利害関係者)向けにつくるものであり、「うちの会社も似ているから危ないかも」とか「同業他社でこんなことがあったが、うちは気をつけよう」などと考えてもらうための「公共財」だ。この会社はどこが問題でどこを直せば良いのか、その参考になる内容かどうかだ。

 一方で、法律文書みたいに書いているのは良くない。報告書でよく見かけるのは「証拠がないから無罪」というような書きぶりだ。「○○の理由で社長が主犯とは認定できない」などと書かれているが、「できない」ではなくて、「証拠が見つからなかった」と書くべきだ。

 調査報告書を後ろから読むのもコツだ。再発防止策の提言が報告書の最後に書かれていて、その少し前に真因(本当の原因)が書いてある。さらに前に戻ると、なぜ、それが真因だと思ったのか、その前提となる事実認定が書いてある。そこから再発防止策までの流れがスムーズに読めるものはわかりやすい報告書といえる。

 ――再発防止策はどのようなものが有効ですか。

 再発防止策に「研修をすべきだ」とか「社長を更迭すべきだ」とか書いてあるのはあまり意味がない。なぜ、そんな社長がトップに続けて就いたのかが大事な点で、たとえば東芝の報告書みたいに「3代の社長が『チャレンジ』と言った」と書くのではなく、なぜ、そんな程度のトップが次々と選ばれたのかの真因を書かなくてはならない。報告書の出来具合をみれば、その会社のレベルがわかる。

第三者委員会報告書格付け委員会

 「第三者委員会や報告書の社会的信用を高めること」を目的に2014年に設立された。メンバーは11年に日本弁護士連合会の「第三者委員会ガイドライン」を作成した弁護士やジャーナリストら9人。報告書の格付けや評価を行っている。これまで16の企業・団体の調査報告書を、利害関係のない委員がそれぞれ評価。各委員がつけた評価の合計は、最高のA評価が1回のみ。Bは24回、Cは40回、Dは31回で不合格(評価に値せず)のFは35回だった。朝日新聞社が14年に出した慰安婦報道に関する「第三者報告書」も格付け対象となり、Dが3人、Fが5人だった。