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 1996年2月13日、山口県豊浦町(現・下関市)のホテル「マリンピア・くろい」で始まった将棋の第45期王将戦七番勝負の第4局。対局室には多くの報道陣が詰めかけ、異様な熱気に包まれた。将棋界の7タイトルのうち、名人、竜王、王位、王座、棋王、棋聖を保持する当時25歳の羽生善治六冠(47)が、史上初の「七冠」を達成できるかに注目が集まっていた。

 対するのは当時33歳の谷川浩司王将(56)。名人5期をはじめ数々のタイトルを獲得している、羽生よりも一世代上の第一人者だ。実は前年の95年も同じ状況だった。

 竜王を獲得して六冠になった羽生は、残る王将位をかけて谷川王将に挑戦。七番勝負は3勝3敗と最終局までもつれたが、最後に敗れた。再挑戦するには1年間、他のタイトルをすべて防衛し、さらに王将戦の挑戦者にならなければならない。限りなく難しいと目されたが、羽生は成し遂げ、大舞台に戻ってきた。

あと1勝の朝、あぜん

 七番勝負は羽生が開幕から3連勝し、七冠まであと1勝と迫っていた。ところが羽生は第4局の2日前から体調を崩し、開始の朝に熱を測ると39度。「あぜんとしました。こんなにひどい風邪は自分でも記憶にないくらい。対局開始の時はボーッとして、2日間体力が持つか心配でした」とのちに述懐している。薬を飲んで対局に臨んだという。

 王将戦は持ち時間がそれぞれ8…

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