[PR]

 体操の全日本個人総合選手権を10連覇していた内村航平(リンガーハット)が、ついに王者の立場を明け渡した。だが、もし大会が、昨年と同じルールで行われていれば、優勝したのは内村で、11連覇を達成していた。若手の台頭が著しい男子体操界だが、内村の存在感はなお大きい。

 4月27日にあった予選で、29歳の内村はあん馬の落下が響いて5位。「体力的にしんどい。いかに消耗せずにやりきるか」と、弱気な言葉を残した。しかし2日後の決勝では6種目すべてで踏ん張り、この日に限ればトップの成績を残した。

 今年はルール変更があり、予選と決勝の合計点で順位を決めた。このため、内村は総合3位に終わった。仮に、過去2大会と同様に、予選の得点を持ち越さずに決勝を戦う方式であれば、勝者は内村だった。

 内村が個人総合2連覇中の五輪でも、2015年まで6連覇を達成した世界選手権でも、予選の得点は決勝には持ち越されない。「僕は決勝一発勝負がすごく得意な選手」と本人も話す。

 年齢とともに疲労が抜けにくくなったという内村は最近、自らを「おじさん」と自虐的に称する。中1日で2日間ともいい演技をそろえなければ優勝できない方式は、まさに「おじさんいじめ」ではなかったのか? そんな記者の問いかけに、「いや、むしろ逆だと思います」と否定した上で、日本体操協会の関係者が狙いを説明してくれた。

 内村が出場にこだわる世界選手権(今秋、ドーハ)の代表選考は、今回の全日本の予選と決勝、そして5月20日のNHK杯の成績が対象だ。3日間の合計得点の上位2人が、まずは自動的に代表切符を手にする。過去には「全日本の得点の半分+NHK杯の得点」などの選び方はあったが、3日間の得点を丸々足して選ぶやり方は近年では例がない。「若手が伸びても、3日間トータルの安定度で言えば、まだまだ内村が上にくると思う」と関係者。つまり、今回の選考は内村に有利な方式という見立てだ。

 国内での連覇を伸ばすことより、世界で戦い続けることに強い意欲を見せる内村。全日本からNHK杯までの準備期間は3週間。「おじさん」が疲れを癒やす時間はたっぷりある。(平井隆介