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 雪国の少年の1日の冒険を描く映画「泳ぎすぎた夜」が12日から、静岡市葵区の静岡シネギャラリーで公開される。監督は静岡県藤枝市出身の五十嵐耕平さん(34)とフランス人のダミアン・マニヴェルさん(37)。「二人とも、よく知らないことを撮ろう」と青森県弘前市で雪中の撮影に挑んだ。

 主人公は地元で見いだした古川鳳羅(たから)くん(8)。通学の列をひとり離れ、魚市場勤務の父・孝さんに、夜中に書いた魚の絵を届けに行く道中をカメラが追う。一見ドキュメンタリーに見えるが、撮影には昨年1~2月の1カ月半をかけた。CGは使わず、鳳羅君が雪原に倒れ込んだり、川に雪玉を投げ入れたりする場面は、まっさらな雪に跡をつけないように周到に準備をして一発撮りした。「鳳羅くんがとにかく、じっとしていない。犬の場面を撮るのが一番楽でした」と五十嵐さんは苦笑する。

 海外の映画評では、絵本やアニメーションにたとえる人が多い。カメラは固定で、セリフは一つもなく、音楽も冒頭とクライマックスにビバルディの「四季・春」がかかるだけ。「雪が降っていると、音が吸収されてシーンとなる。その環境を生かし、鳳羅君の動きと顔の表情にすべてを語らせました」

 五十嵐さんは県立静岡西高卒。高3までサッカーに打ち込んだが、映画に進路を定め、東京造形大、東京芸大大学院を経て監督デビューした。マニヴェルさんとは映画祭で知り合い、意気投合したという。前作の「息を殺して」は工場内の密室劇。次回作では「10代のまだ知られていない一面を描いてみたい」と意欲を語った。(阿久沢悦子)