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 ニューヨーク・タイムズ紙によると、トランプ米大統領は8日、2015年に米英仏独ロ中の6カ国とイランが結んだ核合意から離脱するとマクロン仏大統領に伝えた。14日には米大使館のエルサレムへの移転も控える。国際社会から批判を浴びながらもトランプ氏が親イスラエルの外交政策を強行するのはなぜか。鍵を握るキリスト教福音派団体の集会を取材した。

 米東部ニュージャージー州の人口9万人ほどの町トムズリバー郊外。6日夕、巨大なスクリーンが設置された福音派系の教会の壇上に牧師やイスラエル政府関係者らが次々と上がった。口々に強調したのは、イスラエルに対するイランの危険性だ。500人ほどの周辺住民が熱心に聴き入る。

 集会を主催したのは410万人以上のメンバーを抱える全米最大の福音派系団体「イスラエルのためのキリスト教徒連合」(CUFI)。トランプ政権にも近い存在だ。

 福音派は米人口の約25%が信者と推計され、米国最大の宗教勢力だ。イスラエル寄りの傾向が強く、各種米世論調査では白人の福音派信者のトランプ氏への支持率は約75%。さらに上昇傾向にある。

 キリスト教系テレビ番組のホストを務めるCUFI幹部エリック・ステイケルベック氏は、「核合意は、イランが(核)爆弾を得る時間を遅らせているに過ぎない」と核合意離脱を強く訴えた。

 同氏は「イスラエルの敵は米国の敵だ」と強調。「今、我々には声がある。光の下で働く機会に恵まれている。ホワイトハウスや議員にアクセスできる」と政権との近さを示した。

 集会の参加者は、一様にトランプ氏の政策を称賛した。教会近くに住む塗装業ケビン・レパードさん(51)は「トランプ大統領は、大使館移転で他の大統領になかった勇気を示した。イランはイスラエルへの敵意を示している。(合意離脱を)完全に支持する」と語った。

 宗教と政治の関係に詳しいワシントン大学(セントルイス)のマリー・グリフィス特別教授は「トランプ氏とその側近は、福音派の支持を維持しようとしている。これが政策方針の重要な要因になっている。他国の首脳よりも(トランプ氏に)影響力があるようだ」と指摘。「トランプ氏は福音派が長年求めてきた政策を実行に移している。秋の中間選挙に向けてトランプ氏への熱狂を維持させたいのだろう」とした。(ワシントン=杉山正)

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 〈イラン核合意〉 2015年に米英仏独ロ中の6カ国とイランが結んだ合意。イランが核開発を大幅に制限する見返りに米欧が経済制裁を緩和する内容になっている。イランと敵対するイスラエルは合意に反発し、オバマ前政権との関係悪化の一因となった。トランプ大統領は「致命的な欠陥がある」とし、大統領選中から離脱を公約にしてきた。

 トランプ氏は合意維持の条件として、①イランの弾道ミサイル開発規制の追加②核開発制限の期限の撤廃――などの「修正」を挙げている。欧州は合意維持を求め、追加規制の可能性を米側と協議してきた。トランプ氏は修正の期限を今月12日までとしてきた。