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Round20 中国とどうつきあう? 庄司vs.論説委員 前編

 お笑い芸人の庄司智春は、中国にあまりいい思い出がない。

 昨年、民放バラエティー番組のロケで四川省に。「自撮りするパンダ」が実在するのかを確かめに行ったのだが、飼育職員から「あれだめ、これだめ」と撮影に厳しい注文がついた。「20kgの石の靴を履く」という触れ込みで会いに行ったおじさんは、足が痛いからと靴を履いてくれなかった。しっかりした足取りだったのに……。しかも、飯はおごれという。

 思わずカメラに叫んだ。「もう二度と中国でロケはしません!」

 今回の対談相手である論説委員の古谷浩一は、1枚のグラフを庄司に見せた。

 「日本の8割の人は、好感度調査で、中国に親しみを感じていないんですよ」

 自分も正直、そうだ。庄司はうなずいた。

 中国ロケの苦い記憶だけじゃない。お金にものをいわせた爆買い、人気ブランド品の高値転売。そんなニュースも頭をよぎった。

 「でも」。古谷が意外なデータを告げる。「80年代は、逆に8割の人が中国に親しみを感じていたんです。当時の日本人はアメリカより中国が好きだったんですよ」

 えっ。ちょっと信じられない。

 「80年代は日中の国交が回復してまだ間もないころ。上野動物園にはパンダもやってきて、いい印象が強かった。中国に行ってものごとがスムーズに進まなくても、日本人はまだおおらかに接していた。それが40年たち、状況がまったく違ってきてしまったんです」

 グラフを見るとたしかに、中国への好感度は右肩下がりを描いている。

 古谷が続ける。

 「1989年に天安門事件が起きました。民主化を求める学生が軍に殺された映像をテレビで見て、中国への好感度がぐっと下がりました」

 さらに決定的だったのが、2012年の尖閣諸島国有化による、日中関係の悪化だ。

 中国は2010年に国内総生産(GDP)で日本を抜き、世界2位の経済大国になった。豊かさと比例して訪日客も増え、今では年730万人にもなる。

 庄司が目にする、中国から日本に遊びに来ている人たちは、ブランド品で身を固め、すごく楽しそうだ。浮かれているイメージすらある。

 中国の人は、日本のことが好きなのか?

 「日本に遊びに来ている人は、日本が大好きで、日本に詳しい。一方で、歴史問題から日本が大嫌いな人もいる。中国で記者生活をしていると、この差の激しさに困っちゃう」と古谷。

 その違いは、どこからくるのか。

 古谷の見方はこうだ。

 子どものころから「日本は悪い。みんな日本のおかげで苦しんだ」と繰り返し教え込まれる人もいる。実際に日本を訪れることができた人は日本好きになるが、年730万人といっても、全人口の14億人からみればわずかな数でしかない。

 逆に日本から中国へ行く人はあまり増えておらず、今は年250万人ほど。本場の中国料理や京劇をアピールしても、日本人はそっぽを向いてしまうそうだ。

 5月9日には日中韓首脳会談が東京で開かれ、8年ぶりに中国首相が公式来日した。外交面で日中関係に改善の兆しはあるが、日本人の中国への好感度アップには、まだ時間がかかりそうだ。

 古谷は庄司にアイデアを求めた。「日本も中国も引っ越せない。隣の国でやっていくしかない。いい関係でいたいし、日本の言うこともきいてもらいたい。どうすればいいんですかね」

 うーん。頭を抱える庄司。四川省で食べた麻婆豆腐はおいしかったけど、それだけのために中国へ行くのはハードルが高すぎる。マカオのカジノで、中国の人のマナーの悪さが目についたし、東京で並んでいて横入りされ、ムッとしたこともある。

 すぐに妙案は浮かばないが、自分なりに、うまくつきあっていく方法を考えてみるか。庄司は中国を訪ねたときの記憶をたぐり寄せ始めた。

     ◇

 次回は6月中旬ごろに配信する予定です。

◇論説委員プロフィール

 古谷浩一(ふるや・こういち) 初めて中国に行ったのは高校1年生だった1982年の夏。当時、北京に単身赴任していた父親に会いにいった。それまで見たこともなかった広大な大陸と、そこに住む人々のおおらかさに心を打たれた。

 大学を卒業して1990年に朝日新聞に入社した後、縁あって再び中国に行くことに。上海、北京、瀋陽での特派員を経て、2013年から今年1月まで中国総局長。4月からは国際社説担当の論説委員になった。

 気づいてみれば、記者人生のうち、かなり多くの時間を中国取材につぎ込んできたわけだが、最近つくづく感じるのは、安定した日中関係というものが、日本人にとっても、中国人にとっても、とても大事だということ。月並みだが、そのためには互いのことをよく理解して、信頼関係をつくらなければならない。

 でも、残念なことに、この間、日本では中国のイメージはどんどんと悪くなった。世界のほかの国々と比べても、日本人の対中感情は突出して悪い。最低と言ってもいい。なぜ、こんなにも悪いのか。庄説に初めて声をかけていただいたので、普段感じている、そんな問いを提起させてもらった。

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