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それぞれの最終楽章 在宅医療(5)

佐々木淳・悠翔会理事長(在宅医)

 今回紹介する方は、1世紀以上を生き抜き、今もお元気な男性(102)です。東京都内の有料老人ホームに、奥さん(99)と仲良く暮らしています。実は2カ月ほど前に、いったん「看取(みと)り」段階に入られた方でした。

 私は2017年春からご夫婦を訪問診療しています。今年初め、腸閉塞(へいそく)と、吐いた物による誤嚥(ごえん)性肺炎のため入院しました。腸閉塞は治癒しましたが、肺炎はなかなか良くなりません。主治医は「これ以上やれることはありません。どうしますか?」と家族に尋ねました。お子さんたちは「父は母と暮らしたがっています」と退院を願い出ました。

 病院から私への引き継ぎは、こうでした。「入院中は全く食事や水分がとれず、言葉も全く出ない。ホームへ搬送中に急変の可能性もある」。看護師の記録にも「認知力低下のため、本人理解できず」と書かれていました。

 退院しホームに戻った日、私は彼に会いに行きました。「お帰りなさい」と声をかけると、「ありがとう」と、絞り出すような、でもしっかりした声で答えました。

 「俺は死にに帰ってきたわけじゃない」。彼の目は、そう語っているように見えました。

 「お疲れですよね。具合はどうですか?」

 「大丈夫です」

 「きっと、おなかがすいてますよね?」

 「はい、食べたいです」

 「もう入院させたりしませんから。しっかり元気になりましょうね」

 彼は強くうなずき、少し涙ぐみ…

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