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 2年半ぶりに開かれた9日の日中韓首脳会談で、3首脳の合意事項をまとめた共同宣言の発表が大幅に遅れ、深夜にずれ込んだ。歴史認識と拉致問題の表記で日本と中国の主張が対立。調整が難航したためだ。

 共同宣言は、日本語訳の文書でA4の6ページ分。当初は9日午前11時20分すぎから迎賓館で行った3首脳による共同記者発表に間に合わせる予定だったが、発表は12時間以上遅れ、日付をまたぐ直前の午後11時50分にずれ込んだ。

 複数の関係者によると、まず中国は日本の歴史認識にクギを刺す「歴史を直視し」との文言を盛り込むよう求め、日本が拒んだ。これまでの日中韓会談の文書で歴史認識の文言は、中韓が議長国の時には盛り込まれ、日本が議長国の時には入らなかった経緯がある。日本政府関係者は「未来志向の表現を入れることにこだわった」と話す。

 一方、日本は文書に「拉致問題」を明記するよう求め、中国が反発した。過去の首脳会談の共同文書に拉致問題が盛り込まれたことはなく、中国は「拉致問題はあくまで日朝間の問題」(中国外交筋)との立場。これに対し安倍政権は南北会談での言及に続き、米朝会談での提起につなげるためにも今回の共同宣言で明記にこだわったという。

 最終的に日本が提示したのは、最初の「3国間協力」の項に「悠久の歴史」という表記を入れることで中国の主張に一定配慮。最後の「地域情勢」の項に中韓首脳が「日本と北朝鮮との間の拉致問題が対話を通じて可能な限り早期に解決されることを希望」とする妥協案を示した。

 歴史認識を対日政策のカードに使ってきた中国政府が好んで使う未来志向の表現で前向きな印象を打ち出しつつ、拉致への協力を取り付ける――。日本政府関係者は「歴史と拉致はディール(取引)だった」と振り返った。

 この合意が遅れたことも影響したのか、中国各紙は10日付の朝刊で、日中韓首脳会談や中韓首脳会談の記事を載せたが、日中首脳会談だけ記事が載らなかった。国営新華社通信は9日付の記事を10日朝になって配信。新聞には間に合わなかったとみられる。(鬼原民幸、延与光貞=北京)

日中韓首脳会談の共同宣言(骨子)

・日中韓首脳会談の定期開催で一致

・3カ国が悠久の歴史及び久遠の未来を共有していることを再確認

・自由で開かれた貿易及び投資の重要性を認識。あらゆる保護主義との闘い及びビジネス環境改善に引き続き関与

・日中韓自由貿易協定(FTA)と東アジア地域包括的経済連携(RCEP)の交渉加速に一層努力

・中韓両首脳は、拉致問題が対話を通じて可能な限り早期に解決されることを希望