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患者を生きる・「義足で10秒台」(記者の一言)

 かつては不治の病とされたがん。しかし、医学の進歩で、今では治る可能性も高くなってきました。

 それは小児がんも同じ。ただ、高齢者のがんと大きく異なるのは、がんが治った後の人生の長さです。せっかく元気になったとしても、治療によって患者の体に大きなダメージを残せば、その後の人生のQOL(生活の質)に大きな影響が出てしまいます。

 連載で登場したリオデジャネイロ・パラリンピック銅メダリストの佐藤圭太選手が患ったユーイング肉腫は、子どもがなることが多い典型的ながんの一種です。がんそのものは克服できても、足の切断などたいへんな状況を抱えながら、その後の人生を送っている「元患者」も多いのが現状です。

 そんな状況を何とかしようと、医学も進歩しています。抗がん剤や手術の技術、医療器具の進歩によって、足を切断せずに「温存」できる可能性が、以前に比べて大幅に増えているといいます。

 一方、切断した場合に使う義足も、どんどん進化しています。日常生活用の義足は、人によっては付けていることがわからないほど。実際、佐藤選手の場合も、並んで一緒に歩いていても、言われなければ義足を付けていることがわからないくらいでした。

 さらに、スポーツ用義足の進化もめざましく、障害者スポーツの記録はぐんぐん向上しています。最近では、義足を付けている方が好記録が出るという例も出てくるようになってきています。

 医学と義足がともに進化した結果、「温存」か「切断」か、選べるケースも増えています。しかし、そんな重大な選択を「子ども」がしなければならないという点に、この問題の難しさがあります。

 「温存」した足でも思いっきりスポーツができるような治療法、または見た目が人間の足と変わらないようなスポーツ用義足。難しいとはわかっていても、そんな技術がいつか実現してほしい――取材を通して、強く感じました。

<アピタル:患者を生きる・スポーツ>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/

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 患者を生きる「スポーツ・「義足で10秒台」の全5回をまとめた【まとめて読む】を、明日掲載する予定です。こちらもご覧ください。

<アピタル:患者を生きる・スポーツ>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(田之畑仁)

田之畑仁

田之畑仁(たのはた・ひとし) 朝日新聞記者

1998年朝日新聞社入社。富山支局、田園都市支局、東京本社・大阪本社科学医療部などを経て、2010年4月からアピタル編集部員。