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負動産時代

 皇帝ナポレオン1世の生まれ故郷として知られる仏南部・コルシカ島。土地の所有者が死亡しても相続登記されず、多くの土地が所有者不明になるという日本と同じような問題がこの島で起きている。売り買いもままならない「負動産」の解消に向け、仏政府も対策に本腰を入れているという。日本の所有者不明地問題の解決に向けたヒントを探るため、記者が島を訪ねた。

 現代はゴルフや海水浴など観光客でにぎわうコルシカ島。島の面積は広島県とほぼ同じだ。その島全体の約半分が一時期、所有者不明になっていたという。

 きっかけは、かつての島民の「貧しさ」にあった。フランス革命から間もない1801年、当時の仏国内には土地の所有者が亡くなると半年以内に相続税の申告をしなければ罰金などの制裁を科されるルールがあったが、コルシカ島民については申告しなくても制裁を科さないとする特例が認められた。

 これにより、土地所有者が死亡しても相続登記されない土地が続出。住民の島外への移住が加速したことも災いした。相続登記されないままだと、土地の所有者は子や孫の代になってねずみ算式に増えていく。日本と同様、一区画の所有者が100人を超えるようなケースもあったという。こうなると土地を売買しようにも交渉すらできず、塩漬けの「負動産」になってしまう。

 仏政府が対策に本腰を入れ始めたのは21世紀に入ってから。相続税の申告をしなくても制裁が科されないという200年来の「島の特権」が、国全体の公平性の原則に反するとして仏議会で問題視され、2002年に廃止されたのが契機となった。

 まず着手したのが、所有者不明地の実態把握だ。政府は06年、専門機関「ジルテク」を設立。相続登記などの手続きを担う公証人の経験者や情報システムの専門家ら8人が5年かけ、ナポレオン時代からの地籍や相続人に関する情報を整理し、データベース化した。公証人からの問い合わせに無料で応じる態勢も整えた。

 同じ06年には所有者不明地の解消をめざす法律が制定され、昨年3月には改正された新法も成立した。対象はコルシカ島限定で、原則27年までの時限立法だ。たとえば、複数の人が持っている共有地の処分について、従来は所有者全員の同意が必要だったが、3分の2の同意で済むようにした。登記を促すため、相続税だけでなく、贈与税も5割減免する特例を認めた。

 新法を提出した元国民議会議員のカミーユ・ドロッカセーラさんは「住民に行動を起こしてもらうにはインセンティブ(動機付け)が必要だった。新しい法律は民法と税法の両面からアプローチし、画期的といえる」。コルシカ島公証人評議会のアラン・スパドーニ会長も「私たちは、所有者不明地とたたかうあらゆる『武器』を手に入れた」と話す。

 親族が新法の恩恵を受けたという団体職員のコンスタンティーニ・アルノーさん(32)と、公証人のマリーアン・ピエリさんが取材に応じてくれた。

 アルノーさんの祖父のポールさん(97)とその兄(故人)は、曽祖父が持っていた別荘の土地を分割して相続する口約束をしていたという。曽祖父は1947年に亡くなったが、土地の所有権を確認できる証書がなく、相続できない状態が続いていた。

 新法のもとでは、関係者の証言や地籍に関する情報を添え、その土地を占有していることを示す「公証人作成公知証書」を自治体庁舎などに貼り出し、5年間、第三者からの返還請求がなければ相続に向けた話し合いに入ることができる。この仕組みを使い、別荘地の相続に向けた手続きを進められるメドが立ったという。ピエリさんは「以前なら何十年もかかっていた作業が、数カ月から数年で済むようになった」と話す。

 実態把握と法律の効果により、…

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