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 裁量労働制を違法適用していた野村不動産で男性社員が過労自殺していた問題で、新宿労働基準監督署(東京)が過労死の約4年前に同社を違法労働で調査していたのに、違法適用を見抜けなかったことがわかった。過労自殺をきっかけに改めて調査し、ようやく気付いた。

 裁量労働制は適用できる業務が法律で決まっているが、対象者の実際の働き方を詳しく見ないと適切な適用かどうか判断できず、取り締まりが難しいとされる。主要野党は「いったん導入されると乱用が見抜けない」と指摘。政府が働き方改革関連法案で導入を目指す、高収入の一部専門職を労働時間規制から完全に外す「高度プロフェッショナル制度」にも同じ懸念があるとして反対している。

 裁量労働制は、実際に働いた時間に関わらず一定時間を働いたとみなし、残業代込みの賃金を払う制度。野村不動産は2005年、会社の中枢で企画などの業務に就く人が対象の「企画業務型」を、課長級・代理級の全社員に導入したが、マンションの営業担当など本来は適用できない社員が多く含まれていた。

 関係者によると、新宿労基署は12年に違法な長時間労働などの疑いがあるとして同社の東京本社を調査した。その結果、一般社員の長時間労働については是正勧告した。裁量労働制の適用者も調べたが、勤務時間の適正な把握や、働いたとみなす時間数の見直しだけを指導。違法適用についての指摘はなかった。同社はのちに、残業時間を含めた1日の「みなし労働時間」を9時間から9時間半に延ばした。

 その後、16年9月に裁量労働制を適用されていた東京本社の男性社員が自殺し、17年春に遺族が労災申請したことをきっかけに、新宿労基署は改めて同社を調査。男性を含め、全社的に違法適用していたことが発覚し、東京労働局は同12月に特別指導した。同社は社員約1900人のうち約600人に適用していたが、今年3月に廃止した。

 政府はほかの調査に支障が出るとして、特別指導のきっかけが過労死だったことを認めていない。野党側は、過労死が出ないと違法適用を見抜けないのではないかとの疑念を深めており、「過労死が調査のきっかけだったかは決定的に重要な事実で、その部分を隠して議論されると法案審議が成り立たない」(国民民主・大西健介氏)と調査のきっかけを明かすよう求めている。

 12年の調査について、新宿労基署は取材に「個別の事案についてはお答えできない」としている。野村不動産も「回答を控えさせていただきます」とした。