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 この5月、「バーチャルリアリティー(VR)」の世界に新しい変化が見えてきました。中国レノボと米オキュラスが、相次いで「スタンドアローンVR」と呼ばれるスタイルの機器を発売したためです(写真1)。スタンドアローンVR機器とは、ケーブルを使って別の機器とつなぐ必要がなく、頭にかぶればすぐに使えるVR機器のことです。VRに関する「使うのが面倒」「品質の良いものを体験するには費用がかかる」という2点の課題を解決することで、我々の脳内にある「VRはこういうものだ」という感覚を壊す可能性を持っています。ケーブルがなくなったVRがどんな変化をもたらすのか、実例を挙げながら解説していきます。(ライター・西田宗千佳)

スマホより高品質、パソコンより低価格

 5月に商品化されたのは、レノボの「Mirage Solo」(写真2)とオキュラスの「Oculus Go」(写真3)です。前者はグーグルのVR規格である「Daydream」に準拠した製品で、後者はオキュラスがサムスンと共同で展開していた「Gear VR」を発展させたものと言えます。どちらも、スマートフォン(スマホ)を簡易なHMD(ヘッドマウント・ディスプレー)に差し込んで使うスマホ向けVRであり、スタンドアローンVRはスマホの技術を応用したものと言えます。

 「ああ、スマホのやつね」。そんな風に思う人もいるでしょう。正直、スマホ向けのVRは色々と問題を抱えており、いい体験ではありません。確かに、自分の周囲360度を別の映像に入れ替え、その場にいるような感覚を得ることはできます。しかし、画質はすっきりせず、操作はしづらく、その割にスマホ側での処理負荷が大きいので、バッテリー動作時間の問題もありました。15分、30分の体験ならいいのですが、1時間、2時間という長い時間の動作には向きません。そうした問題を解決するため、ハイエンドスマホ向けに最適化を図った規格がDaydreamでありGear VRでした。そのため、スマホVRとしては比較的良い体験ができています。

 しかし、Mirage SoloやOculus Goを使うと、配慮が行われたDaydreamやGear VRであっても、やはり満足ができないことがわかってきます。とにかく画質と快適さが圧倒的に優れているのです。

 解像感や鮮明さでいえば、Mirage SoloとOculus Goは、パソコンやゲーム機と接続して使う「ハイエンドVR」と呼ばれる機器に勝るとも劣りません。ハイエンドVRは、ディスプレーとレンズが一体として設計されたHMDになっているので、映像に妙なにじみやぼけが少ないのが特徴です。スマホVRの場合、汎用(はんよう)のスマホを後ろから差し込む関係で、表示の最適化は困難です。Mirage SoloやOculus Goは一体型ですから、ハイエンドVRと同じように専用設計になり、にじみやぼけがかなり抑えられています。

 それでいて、ハイエンドVRと違い、ケーブルがないことが重要です。ハイエンドVRは高画質ですが、あくまでパソコンやゲーム機の周辺機器という扱いなので、それらの機器とケーブルで接続する必要があります。部屋の中で自分の位置を定める「ポジショントラッキング」を実現するために、別途センサーをセットアップする必要がある機器もあります。ハイエンドVRは、今手に入る最高のVR環境を実現できるのですが、とにかく使うまでがめんどくさい。筆者もいくつか持っていますが、使い始めるまでの時間の長さが気になって、使用頻度は上がっていません。

 しかしスタンドアローンVRは、ケーブルがありません。頭にかぶるだけで使えます。周囲にセンサーも設置しません。スマホを差し込む手間もありません。使いたい時に電源を入れ、かぶるだけ。劇的に簡単で、楽になります。

 さらに値段も安い。Mirage Soloは5万5296円(税込み)、Oculus Goは下位モデルの場合、2万3800円(税込み)とかなり安くなっています。ハイエンドVRはHMDだけで4万円から8万円かかり、別途ゲーム機や高性能なパソコンが必要なので、トータルの費用は10万円から20万円になります。スマホVRは、HMDこそ数百円から1万円強と安価ですが、品質はピンキリですし、スマホ自体はVRに耐えるハイエンドのものとなると、本来8万円程度はするものです。

 そう考えると、簡単で品質が良…

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