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高倉慶応さん

 ルネサンス建築を描いたイタリア、ナスカの地上絵をあしらったペルー、国花ゴールデンシャワーの黄色が黒地に鮮やかなタイ。

 東京五輪に向けて、世界196カ国を表現した着物を作る「KIMONO PROJECT(キモノプロジェクト)」を進めている。4月末、完成した100着を福岡県久留米市で披露。モデル全員が手をつなぐフィナーレで「着物が人と人を結び、世界が一つになる」と呼びかけた。

 銀行員を経て老舗呉服店を継いだ3代目。貸衣装と廉価品に押され、妥協を強いられる職人を目の当たりにした。業界を勇気づける「起爆剤」はないものか。2013年秋、五輪の東京開催が決まり、「日本の民族衣装で彩ろう」と思い立った。

 1着の制作費200万円、総額4億円の大事業。当の着物業界から「どんな商売目的なのか」「夢物語だ」と奇異の目を向けられた。なじみの京友禅や西陣織の作家を説いて回り、まず自費で南アフリカなど5カ国分を仕上げた。その出来栄えに「こんな仕事がしたかった」と各地の作家が続き、寄付の輪も全国に広がった。

 開会式など公式行事での採用を目標に、すべての国の振り袖の完成をめざす。「着物の美しさ、日本の伝統文化の力が人を動かし、夢物語がここまで来た。きっと世界の人の心も動かすはずです」文・市川雄輝 写真・小宮路勝