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 名古屋城木造新天守にエレベーターを設置すべきか――。「不設置」とする名古屋市の方針に障害者団体が抗議するなか、市のアンケートでは子育て中の母親や高齢者からも設置を求める意見が多い。母親や高齢者の声を聞いた。

 市は3~4月、子育て中の母親や高齢者を対象にアンケートを実施。中区栄の「市子ども・子育て支援センター」の利用者では、設置賛成の意見は19件、設置反対は10件だった。

 記者が15日、センターで母親らに尋ねると、設置の賛否にかかわらず、幼い子どもがいる母親の多くが外出の際にベビーカーを使っており、エレベーターのない城を上ることは難しいと感じていた。

 2歳の長男を遊ばせていた中区の主婦加藤千治さん(44)は「市長が掲げる『史実に忠実な復元』の観光面の価値を考えると、賛否は難しい」。けれども「自分が上るとすれば、気合を入れておんぶひもで背負っていく感じ。(子どものいる)お母さんはなかなか行けないでしょうね」。

 河村たかし市長は代替案としてロボットなど新技術によるバリアフリーを掲げている。ただ、その新技術で何階まで上がれるのか。河村市長は「少なくとも1階まで上がれることは保証する」と述べるにとどまっている。

 育児休業中の中区の小学校教諭木村未来さん(32)は、社会見学で児童を名古屋城に連れていったことがある。「車いすの子がいたら、その子だけ上に行けないかも」と心配する。妊娠8カ月という千種区の会社員三橋真理恵さん(28)は「代替策というのが、係員に頼まなければいけないものだったら利用しづらい。エレベーターなら声をかけずに乗れるのに」と話す。

 一方、老人福祉センター(17カ所)でのアンケートでは、設置賛成が122件。反対22件を大きく上回った。15日、中区の前津福祉会館など2カ所で賛否を尋ねた。

 碁を打っていた港区の天野鐐一さん(73)は「せっかく木造で復元するのに、エレベーターのような近代的なものをつけたのでは、何のためにとんでもないお金をかけるのか分からない」。別の70代男性も「当時の城を見てみたい。目や足腰が悪いが、階段で行けるところまで行ければいい」と市の方針に理解を示した。

 一方、ひざが悪いという中区の80代女性は「名古屋城は名古屋に住む人の誇り。障害者であろうが、高齢者であろうが、一度は上ってみたい。エレベーターがなければ『あそこは大変だよ』と言われてしまう」。北区の主婦戸松勝子さん(81)は「エレベーターをつけると、そこまで景観が悪くなるのでしょうか。障害者の方も喜んでもらえる施設にした方が、名古屋の優しい気持ちが伝わって多くの人に来てもらえるのでは」と話した。

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http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(堀川勝元)