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 バッハが活躍した17~18世紀のバロック時代の音を再現したうえ、音を自由に操れる最新の制御装置を併せ持つパイプオルガンが、オランダで完成した。音色づくりを日本人のオルガン製作者が担当。手作りの音で、通常ではできない技法や音響を作り出すことができるといい、作曲の新たな可能性をひらくオルガンとしても注目されている。

 アムステルダムにあるコンサートホール「オルゲルパーク」で公開された「ユートピアバロックオルガン」は、約4千本のパイプを備えた荘厳なつくりだ。バッハが演奏した時代の音を忠実に再現しようと、オルガン製作者の横田宗隆さん(66)がパイプ一本一本の厚さや形を調整し、音色をつくった。

 オルガンには、通常の鍵盤とは別に、モニターと鍵盤のついた制御装置が備えられている。パイプに空気を通す弁を遠隔操作することで、人の手では不可能な速さで音を反復させたり、音を組み合わせたりできるという。バロック時代の音を使いながら、パイプオルガンが持つ多彩な音響の可能性が無限に広がる。

 横田さんは「シンセサイザーに慣れた作曲家に、本当のバロックの音を素材とした新しい音楽を創造して欲しい」と話す。

 パイプオルガンは産業革命を経て大型化し、多様な表現ができるようになった。一方で、20世紀に入るとバロックの復興運動で極端に無機質な音が求められるなど、ちぐはぐな状況だったという。

 「本当のバッハを演奏できる楽器をつくろう」と、ホールを運営する財団が約15年前からモデルとするオルガンを探し始め、スウェーデンでオルガンを研究していた横田さんに音づくりを依頼した。横田さんは、バッハが信頼していた製作者が作ったオルガンなどを訪ね歩き、当時の音色を割り出したという。

 完成した「バロック時代の音色」を聴くと、鮮やかな響きの中にわずかな雑音を感じる。横田さんは「地元の人に愛着を持ってもらえるように、その土地の『民俗的な音色』を残して仕上げた」と話す。財団の研究員で、楽器製作に関わったハンス・フィドムさんは「このオルガンはバロック時代の複製品ではなく、私たちが知らなかった表現の世界に近づけてくれる楽器だ」と話した。(アムステルダム=河原田慎一)