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 東京都美術館(上野公園)で開催中の「プーシキン美術館展――旅するフランス風景画」(朝日新聞社など主催)の入場者が10万人を超え、18日、記念のセレモニーがあった。近代フランスの巨匠らの作品が並ぶ展覧会だが、一見地味ながら、SNSや口コミで人気がじわりと広がっている作品もある。

 セレモニーでは、東京都小平市の大学生三上真優(まゆ)さん(21)に図録などが贈られた。美術館巡りが好きで学芸員志望という三上さんは「モネの作品がぜひ見たくて来ました。大学では旅行サークルに入っていて、風景画を見るのも好きです」と話した。

「絵の中に入ってしまう」

 ロシア屈指の美術館のコレクションから、ルソー、ルノワール、セザンヌ、ゴーギャンらの風景画65点を展示している。特に初来日のクロード・モネ「草上の昼食」は「主役」に指名され、パンフレットやポスターに使われている。

 一方、モネらに知名度では劣るが、ルイジ・ロワール(1845~1916)の「パリ環状鉄道の煙(パリ郊外)」(1885年)が来場者のSNS投稿などで評判となっている。

 厚い雲に覆われた空と大通りを、汽車の吐き出す煙が横切る。グレーが基調の画面からは地味な印象を受ける。広報用の提供写真もなく、メディアではほとんど紹介されていない。

 しかし、ツイッターでは、「見ているだけで自分がパリの街にいる」「あの道に向かって走って行きたくなりました」「背景のもくもくとした煙が、まるで日本画の銀泥で描いたみたいに鈍く輝いて見えてすばらしかった」と感動を伝えるコメントが相次いでいる。なかには、「少し離れて右側から見ると、突然絵の中に入ってしまったようなリアリティーに襲われる。VRみたいだった」と語る人も。確かに、絵の右側に立つと、道路を真っすぐ見通す視点を得る。そのせいか、画面への没入度が格段に増すようだ。

当初は来日候補に入らず

 「人気の理由は、1885年のパリ郊外にタイムスリップしたような臨場感でしょうか」と話すのは、都美術館の学芸員大橋菜都子さん。モスクワのプーシキン美術館で初めて見たとき、大橋さんもそう感じたという。当初の来日候補には入っていなかったが、ぜひにとリスト入りさせた。

 「汽車の走る音、煙のにおい、雨上がりのにおいなどをリアルに想像させてくれます。幅296センチ、高さ172センチと本展最大級の作品で、前に立つと、自分が絵の中に入っていくような感覚に。このサイズで描いたのも、そうした効果を狙ったのでしょう。鑑賞者が道に立つように、人の視点から描かれていること、遠くへ続く道路と視界をさえぎる煙によって生み出される奥行き、水たまりや雲の雨上がりの描写、日常の暮らしを営む人々の何げない動作(もしくは何もせずたたずむ様)が臨場感を強めている」と解説する。

 大橋さんによると、ロワールは、日本では出会う機会がほとんどない画家。近代都市として生まれ変わったパリの街そのものに関心を寄せ、風景を淡々と描き、若い画家に大きな影響を与えたという。

ロシアグッズも人気

 展覧会関連グッズの販売コーナーでは、図録やポストカードなどの定番に加え、ロシアの雑貨や、「草上の昼食」にちなんだアウトドア用品や食品も人気になっている。特にマトリョーシカや、ロシア語のアルファベットをあしらった缶バッジやマスキングテープが売れ筋という。

講演会も

 展示作品を解説する無料の講演会も同館で開かれる。

 6月2日午後2~3時30分、三浦篤・東京大教授「クロード・モネの《草上の昼食》――その謎と魅力について」。展覧会入場券(半券可)が必要。午後1時から同館講堂前で整理券を配布。

 5月25日午後6時30分~7時、大橋学芸員による見どころ解説。入場券か半券が必要。

 展覧会は7月8日まで(月曜休館)。午前9時30分~午後5時30分(金曜は午後8時まで)。一般1600円、大学・専門学校生1300円、高校生800円、65歳以上1千円。公式サイトはhttp://pushkin2018.jp/別ウインドウで開きます。(曺喜郁)