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 千葉県佐倉市の国立歴史民俗博物館で特集展示「お化け暦と略縁起―くらしの中の文字文化―」が開かれている。生活の中での文字文化を考える展示で、暦が変わっても人々の暮らしがなかなか変わらなかったことや、江戸時代の人が旅に出て行っていたことが現代にも通じることを約60点の資料や写真で伝えている。

 展示を担当した同館の小池淳一教授によると、「お化け暦」は1873(明治6)年に政府が太陽暦を採用したあとに、いわゆる旧暦と日々の吉凶など様々な暦注を記した秘密出版の暦のこと。太陰太陽暦から太陽暦への改暦は約1カ月前に発表するという強引なもので、福沢諭吉はその意義や価値を認めていた。

 一方、農業や漁業は月の満ち欠けを中心に組み立てていたため、急に太陽暦を使うよう言われた民衆は混乱。改暦とともに印刷物としての暦の記載内容も変わり、縁起が良い日なのかどうかなどを知ることができなくなった。こうした民衆の必要性から「お化け暦」が生み出されたという。

 お化け暦は政府が刊行した暦の一種「略本暦」に準じた形の小冊子だったが、表題では暦という文字を使わず、「九星表」「九星早見」「農家便覧」などとされた。店の判子が押してあったり、お年賀で配られたりするなど、現代にもつながる使われ方もした。

 「略縁起」は寺社の由来や沿革などを記した1枚から数ページの印刷物。江戸時代から盛んに刊行されるようになった。庶民の文化を伝えるもので、例えば寺の略縁起を通して「肉附面(にくづきのめん)」の民話は全国に広まったといい、肉附面に関する略縁起は5点が展示されている。

 また、米沢藩士の吉田丈助が1820(文政3)年に伊勢参りに出かけた際に集めた略縁起も4点を展示。「旅の思い出を伝えるものとして、略縁起が機能した」と説明されている。

 10月28日まで。月曜休館(祝日の場合は開館し、翌日休館。8月13日は開館)。一般420円、高校・大学生250円、中学生以下は無料。問い合わせはハローダイヤル(03・5777・8600)へ。(稲田博一)