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 「徘徊(はいかい)」という言葉は使いません――。愛知県大府市は、行政文書や広報で、「徘徊」を「一人歩き」や「一人歩き中に道に迷う」など、状況に応じて言い換えることを決めた。

 ここ数年、認知症の当事者から「目的もなく歩き回るという意味の『徘徊』は実態にそぐわない」との声が上がっている。兵庫県や東京都国立市、福岡県大牟田市なども、「徘徊」の使用を取りやめた。

 大府市は昨年12月、「認知症に対する不安のないまちづくり推進条例」を全国で初めて制定し、今春施行した。関係者によると、大府市は、当事者の声や他自治体の動きを踏まえ、今後、「徘徊高齢者」を「外出中に道に迷った人」などと言い換える方針だ。

 認知症の人の外出は、目的や理由があることが多い。徘徊と表現することで「外出は危険という誤解や偏見につながる恐れがある」として、市は市民や関係団体にも理解を求める。

 大府市では2007年に、認知症の男性(当時91)が列車にはねられて亡くなった。この事故をめぐり、遺族がJR東海から損害賠償を求められたが、最高裁で賠償責任はないと結論づけられた。長男の高井隆一さん(67)は、大府市の対応について、「率直にうれしい」と歓迎する。

 高井さんは、父の死が「徘徊」と報道されるたびに、認知症の人が危険な存在という誤ったイメージが広がっているように感じたという。「ほかの自治体や報道機関にも、この流れが広がって欲しい」と話す。

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 朝日新聞は今年3月から、認知症の人の行動を表す際に「徘徊」の言葉を原則として使わず、「外出中に道に迷う」などと表現しています。今後も認知症の人の思いや人権について、様々な側面から読者のみなさんと考えていきます。(斉藤佑介)