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(22日・プロ野球 ソフトバンク5―3西武)

 普段は寡黙な男が、思わず感極まった。2016年9月11日以来、2季ぶりの白星を手にしたソフトバンクの摂津正。久々に上がった本拠のお立ち台で、目を潤ませた。「内容は良くなかったが、なんとか粘れた。(ファーム施設のある)筑後での、がんばれ、1軍で待っています。その声が原動力になった」

 今季初登板。西武打線に5回無失点ながら102球を要した。与えた四球も五つ。「久しぶりの登板で力んでしまった」。ただ、毎回走者を背負っても本塁は踏ませない。

 四回2死満塁のピンチを迎えた場面だ。右腕を鼓舞するように、観客席のファンから自然と拍手がわき起こった。「本当にありがたかった。あの声援が投球につながった」。金子侑にフルカウントから力勝負。143キロの速球で三飛に打ち取ると、何度もグラブをたたいた。

 12年の沢村賞投手も、若手の台頭などで昨季は初の未勝利に終わった。1軍が埼玉・所沢でリーグ優勝を決めた昨年9月16日。福岡・筑後での2軍戦で先発として投げた。「(リーグ優勝時の2軍戦登板は)複雑でした。一番苦しいシーズン。だめだなという気持ちに何回もなりそうだったけど、必死に投げて結果を出そうとやっていました」

 35歳。肉体の衰えは自覚している。体作りから見直し、体幹周りを重点的に強化。股関節、肩甲骨の可動域を広げながら、投球時に体が回転する速さを上げるためのトレーニングに励んだ。3年契約最終年の今季も2軍スタートだったが、腐らず投げ続けた。故障離脱した千賀の代役で巡ってきたチャンスをものにした。

 一昨年に長女を授かった。帰宅後、まな娘と過ごす時間は活力になった。「娘が寝るまでの時間はいつも見ているんですけど、毎日が楽しみで成長を感じる。(娘の)記憶に残るくらいまでプレーしたい」。父となり、覚悟もより強くなった。「(娘が)生まれてから勝っていなかったので、死にものぐるいで投げた」。娘に贈る「初勝利」でもあった。

 試合後、ウィニングボールについて問われると「大事に保管します」。2軍暮らしで日焼けした顔をほころばせた。(甲斐弘史)