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 イタリアのマッタレッラ大統領は28日、国際通貨基金(IMF)の元局長カルロ・コッタレッリ氏を新首相に指名した。先に首相候補に指名したジュゼッペ・コンテ氏が就任を辞退したためだ。新政権は次期総選挙までの暫定内閣の位置づけで、早ければ秋にも再選挙となる。3月の総選挙後、イタリア政治の混迷は一段と深まっている。

 マッタレッラ大統領から首相指名を受けたコッタレッリ氏は、財政再建など欧州連合(EU)と協調する姿勢だ。指名後、「イタリア経済は成長を続け、財政はコントロールされている。すぐに閣僚名簿を出し、来年度予算を含む政策を議会に示す」と述べた。さらに「予算を通すまでの暫定内閣で、選挙には出馬しない」と強調した。

 だが、宣誓から10日以内にある上下両院の信任投票で、新内閣は信任されない可能性が高い。投票議員数の過半数が必要だが、EU懐疑派の「五つ星運動」と右派「同盟」の両党で両院の過半数に達するためだ。

 新内閣は宣誓によって発足はするが、両党が反対すれば法案などが通せず、政権運営は滞る。コッタレッリ氏は、内閣が不信任となった場合は「今秋以降に選挙になる」と述べた。

「ユーロ圏離脱」が問題に

 3月の総選挙後、新内閣が成立しない「政治空白」の期間は28日、イタリアが戦後に共和制に移行して以来、最長となった。五つ星と同盟が連立に合意したのは18日。フィレンツェ大教授のコンテ氏を首相に推薦し、マッタレッラ大統領もコンテ氏に組閣を命じた。

 ところが、経済相ポストが問題となった。候補に挙がったサボーナ氏(81)はイタリアのユーロ導入を推進したチャンピ政権(1993~94年)で産業相を務めた。だが近年は、ユーロ圏からの離脱計画を進めるよう主張。財政が不安視されるなかで、マッタレッラ大統領は「反EU派」の経済相就任を認めなかった。するとコンテ氏は組閣を断念し、27日に首相指名を返上してしまった。

EU懐疑派、大統領告発を主張

 結局、マッタレッラ大統領が自らの主張に近いコッタレッリ氏を首相に指名したことで、五つ星と同盟は「強権的だ」と反発を強めている。

 マッタレッラ大統領は中道左派出身で、2015年に就任。イタリアの大統領は任期が7年と長く、上下両院議員などの間接投票で選ばれる。首相の任命権や議会の解散権が憲法で保障され、権限は大きい。一方、閣僚候補を拒否する権利は明文化されていない。

 このため、五つ星は「選挙に勝利したのに政権に入れない。民主主義の危機だ」と批判。大統領の弾劾(だんがい)を定めた憲法90条を持ち出し、大統領の告発を検討すべきだと主張する。(ローマ=河原田慎一)

金融市場、混乱を警戒

 金融市場は政局の混乱ぶりを警戒する。28日のイタリアの株価指数は上昇して取引が始まったが、その後売られた。イタリア国債も売られ、流通利回りは一時年2・6%台と約2年10カ月ぶりの高さまで急上昇した。利回りの高さは、国債が投資家に人気がないことを意味する。

 みずほ総合研究所の吉田健一郎上席主任エコノミストは「再選挙になれば、民主主義による選挙結果が既得権層に拒否されたといった訴えを掲げ、五つ星や同盟が議席をさらに増やす可能性がある」とみる。

 経済規模でユーロ圏3位のイタリア政局の不透明さが続けば、成長が減速しているユーロ圏の経済全体にも影響を与えかねない。吉田氏は「企業が投資を先送りするなどの影響が出る可能性もある」と指摘する。(ロンドン=寺西和男)