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 その詞世界で、僕は聖子ちゃんとデートした。夏の海で冬の街で秋の高原で、聖子ちゃんはいつも僕のそばにいて、笑ったり泣いたりはにかんだりしていた。そんな思春期の甘い夢には「作詞・松本隆」のクレジットがあった。1980年代、若かった僕たちを酔わせた作詞家が今、神戸にいるという。元町駅近くの小さな喫茶店で、松本さんを待った。

1949年生まれ。慶大在学中に細野晴臣、大瀧詠一、鈴木茂とロックバンド「はっぴいえんど」結成。ドラムと作詞を担当した。解散後は作詞家として「ルビーの指環(ゆびわ)」(寺尾聰)、「赤いスイートピー」(松田聖子)、「木綿のハンカチーフ」(太田裕美)「スニーカーぶる~す」(近藤真彦)など2千曲以上の歌詞を手がけた。

 「僕はコーヒー。あなたは?」

 ――あ、じゃ私もコーヒーを。

 「僕は喫茶店が、好きなんです。街には安らげる場所があった方がいい。東京は、ちゃんとした喫茶店が少なくなって、全国チェーンの店ばかりになった。チェーン店は日本中どこも同じで、あんまりおもしろくないな。神戸には古い、小さな喫茶店がたくさんありますね。年をとると、古いものが好きになるんです」

 ――神戸にも居を移されてどのぐらいですか。

 「6年ぐらい前かな、仕事に追われる生活を一度、断ち切ろうと思った。僕は東京の港区は青山の生まれなんです。子どものころ、港区というわりに、どうして港がないのかな、なんて考えたこともあったぐらいで、東京を引き払って、港のある街に行こうと思ったんだ。それで海があって山があって街がある神戸に自宅を、友達の多い京都に仕事場を構えたんです」

 ――神戸の街は好きですか。

 「本当の風が吹いてるよね」

 ――?

 「僕の部屋から神戸港が見えるんです。窓を開けると海風が入ってくる。山側の窓からは六甲の風。風が通って、夏でも涼しいんだ。凪(なぎ)の時間も決まっていて、風が止まって急に暑くなる。東京にはない風、そう、風がはっきりしてるんだ。そこが気に入ってる」

 「車で東灘、芦屋あたりも行きます。レストラン、カフェ、ベーカリー、ケーキの店や喫茶店もある。おいしい中華料理店が住宅街に紛れ込むように建ってたりしてね。見つけにくいんだけど、そんなところも好きだな」

 ――神戸の街を詞にしようと思ったことは。

 「去年、歌手のクミコのアルバム『デラシネ』の中の1曲で『しゃくり泣き』という詞を書いた。僕自身、神戸の歌にするつもりはなかったし、歌詞に一言も『神戸』は出て来ない。だけど、聴けば神戸の歌だと分かる。何でだろうね、自然にできるんだ。いつもそうだね」

 ――三宮駅周辺では再開発の計…

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