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 日本大学アメリカンフットボール部選手が危険なタックルに突き進んだ問題に、関心が集まる。何が若者を追い詰めたのか。アメフトだけの問題か。見る人はそこに、何を感じたのか。

高橋正紀さん 岐阜経済大学サッカー部総監督

 「スポーツマンシップの基本は」と聞かれたら、どう答えるでしょうか。正々堂々、戦い抜く、という言葉が思い浮かぶかもしれませんが、私は「楽しむ」「自分が大切」が基本だと考えます。

 一番楽しい空間は、非日常の遊びであるゲームです。この空間を構成する自分、仲間、相手、ルール、審判を尊重する、つまり、正々堂々とするのは楽しむためです。何かに挑戦し、やり抜くことで人は成長します。スポーツで戦い抜くのは、大切な自分磨きのためです。

 いずれも自分のためと理解した選手は、周りに感謝し、自ら頑張るので、体罰は必要はない。これまで、選手と指導者あわせて5万人以上を対象に、700回近く「スポーツマンのこころ」と題した講演で、伝えてきました。

 ドイツ留学中にサッカーの試合で勝ったとき、相手に「ありがとう。君の守備はすごかった」と感謝されました。自分を磨ける強い相手と出会えたからです。しかし日本では、勝つことが一番です。相手を「敵」と表現してしまい、負けることを、恥と考えてきました。

 「勝たないと楽しくない」と言う選手は精神が弱い傾向にあります。「失敗できない」と、積極性を失ってしまう。サッカー日本代表は、過去に出場したワールドカップで、先取点を奪われた7試合の結果は1分け6敗でした。挽回(ばんかい)できず崩れるのは、予想外の展開になった際に「自分が成長できる機会だ。挑戦しよう。楽しい」と考えられないからでしょう。

 日本は選手を、スポーツだけに生きるように強います。メディアも国民も、勝つことが最も大事だと思っています。選手にとって、スポーツでの過ちは世界の終わりになる。日大の指導者は、出場機会を奪うという世界の終わりをちらつかせ、選手の正しい判断を奪いました。

 私が指導するサッカー部は、目標が四つあります。優先度の高い順に、授業の単位を取る、サッカーを4年間やり切る、アルバイトをする、高め合える恋人をつくる。日常で大切にすることがあり、スポーツは非日常の遊びの空間と認識できたら、たとえ試合に出られなくても世界は終わらない、とわかります。

 「大切な自分」を磨く人材育成を重視してきた海外も、最近は商業主義にまみれ、スポーツマンシップの価値が低下しています。指導者にとって、そんな選手を育てても認められないし、金にもならなくなっています。

 日本では、トップ選手で引退後に別の分野でスポーツ以上に活躍するロールモデルがほとんどいません。スポーツマンシップが定着したこともありません。浸透させることが、難しくなっていると感じます。(聞き手・後藤太輔

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 たかはし・まさのり 1963年生まれ。3部リーグだったサッカー部を2012年に全国大会に導く。専門はスポーツ精神医学。

■ハリス鈴木絵美さん Chan…

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