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記者が聞く 父親の心得(上)

 父親でもある3人の記者は妻の出産準備や家事、育児で日ごろ悩んでいます。その処方箋(せん)を聞こうと専門家を訪ね、3回報告します。8月に出産予定の妻のため、よかれと思って里帰りを勧めた記者(31)。でも実際は……。

 妻の岡山県への里帰りはこの4月、自分の名古屋から東京への異動にあわせてだった。出産予定の4カ月前だが、新天地での仕事で頭がいっぱいの自分といるより、故郷で妻の両親といる方が安心だと考え、妻も賛成した。だが、これが2人の溝を生んだ。5月末のある夜のこと。

 「えっ、なんで電話を切るの?」

 電話の妻は、生まれてくる子どもの名前や、自身の体調について話したがっていた。一方で、自分は電話だが毎日話しているという思いと、見たいテレビもあって電話を切り上げてしまった。

 「ばか」。直後、LINE(ライン)で妻がメッセージを送ってきた。強い怒りを感じ、「やってしまった……」。それから丸1日、電話を取ってもらえなかった。

 産前産後の夫婦関係に詳しい市川香織・東京情報大准教授(看護学)にいきさつを話した。

 《いけません。具体的な答えを無理に探さなくても、話に耳を傾け、体調の悩みや産前産後の問題を一緒になって考えることでも安心しますよ。》

 妻からはたびたび「もっと真剣に考えて」と言われていたことを思い出した。子どもの名前、東京での保育園選び、妻の仕事の復帰時期――。妻の里帰り以降、電話で話してきたつもりだったが、顔を合わせる機会が少ない分、ひとごとのように聞こえたかもしれない。付き合いの飲み会が続いて電話に出ず、妻が泣いたこともあった。

 体調の変化もあり、「もうすぐ」母親になるという意識が強まっている妻。一方、女性のような実感がなく、「まだ」と考えがちな自分の反応。妻にとってはふまじめに映るのだろう。しかも、離ればなれになり、体調や気持ちの変化にも気づきにくくなっていた。里帰りには利点もあるが、互いの思いが通じにくくなる面もありそうだ。

 《妊娠後、早めに里帰りする場合、離ればなれの期間が長くなるので、より意識的にコミュニケーションを深めておかなくてはなりません。》

妻の思いを共有

 福岡県が2016年、子育て中の20~40代の父母139人に行った調査では、妊娠期の妻が夫を「不満」「大変不満」に思う割合が3割に上った。これを解消するのに必要なものは何だろう。

 《まず何が一番大変かを聞くこと。特に、体の変化は父親にとって未知の世界ですが、どんな負担があるか知ろうとすること。「3キロもある子どもがおなかにいるなんて、しんどいだろう」と想像する。妻の思いを共有しましょう。》

 自分は、妻の体調管理や日々の相談事を義父母任せにしていた。その方が妻も安心だろうと考えたからだ。出産まで悩みに寄り添うことをせず、一番の役目は出産への立ち会いだと思っていた。

 市川准教授は、産後に向けたアドバイスもしてくれた。

 《産後3カ月ほどは母親の体力が回復しません。それでも赤ちゃんは数時間おきに母乳やミルクを求めるなど、お構いなし。出産後、母親の7~10人に1人がうつになるというデータもあります。準備不足では対応できません。居住地の自治体の産後ケアサービスを調べたり、役割分担を決めたり、父親にできることもあります。》

 自分は日中、仕事で家にいない。一方、妻は東京には縁がなく友人もいない。東京に住む自分の父母の手を借りるかどうかも話し合っておらず、このままでは妻の「孤育て」になる。妻の思いもくみながら、ベッドやおむつといった新生活の準備、保育園の見学、自治体への相談などできることをやれば、自分も変われるだろうか。

 《出産前後で夫婦の関係がぎくしゃくすることもありますが、同志として、子育てに向き合うことで関係を深める機会にもなります。》(山本恭介)

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