• アピタル

乳がん術後のリンパ浮腫 漫画家、セルフケアシート作成

高室杏子
[PR]

 乳がんなどの手術の後遺症で、わきから手にかけてむくむ「リンパ浮腫」。命にかかわる症状ではないと軽く扱われがちだが、進行にともない腕を動かすことが困難になる。適切な対処法を知ってもらうために、茨城県石岡市の漫画家・さかいひろこさん(52)がイラストを添えたセルフケアシートを完成させた。

 シートは風呂でも使えるよう、浴槽のふちに置いたり、湯船に浮かべたりしてぬれても使える紙で作った。さかいさんは2005年に乳がんと診断され、リンパ浮腫について知った。不安な気持ちに苦しんだことから、わかりやすいイラストを通して対処法を広めることを考えついたという。自分から見た体の向きに合わせて描き、使いやすいよう工夫している。

 県看護協会内にある「みんなのがん相談室」の看護師によると、リンパ浮腫は乳がんの手術でリンパ管やリンパ節を切除した際の後遺症。リンパ節に近いわきから指先までの皮下組織で体液が滞り、むくんでしまう症状が出る。腕が重く感じたり、皮膚が硬くなってしまったりする。卵巣がん子宮がんの手術後では足がむくむこともある。

 症状を防いだり、和らげたりするのが「リンパドレナージ」という対処方法だ。全身のリンパ液の流れを、手でさすることで促す。直接肌を触らなければ効果が得られず、症状が急激に進行することもあるため、日ごろから入浴中などに行うことが重要だという。

 シートでは、ドレナージのやり方をかわいらしいキャラクターが解説。日常に溶け込みやすいよう、絵本のような柔らかい色使いを心がけたという。「右わきの下に手をあて20回まわす」「圧の加減はペットをなでるくらいに」など、回数や具体的な例えを用いて、わかりやすさも追求した。

 さかいさんが、利き手がある右の乳がんの手術を受けた05年当時、リンパ浮腫を専門的に治療するために定期的に通える医療機関はなかなか見つからず、乳がんの診察をした医師にとっても専門外だったという。別の病院に通う中で、患者らが乳がんについて学ぶ勉強会に出合い、ドレナージを知った。

 「右手で漫画を書いており、利き手がうまく動かなくなるかと思うと怖くて不安が止まらなかった。ペンを握れなくなる状況を防ぎたかった」とさかいさん。その後、自身でドレナージを実践し、軽い症状は出たものの重症化は避けられたという。ドレナージのやり方を広めたいと、08年ごろから、勉強会で知り合った医師らの監修を受け、シート作りに取り組み始めた。

 作成費は県の補助金と自費、監修した医師からの寄付でまかない、右腕用と左腕用で2千枚ずつ作った。「みんなのがん相談室」では、相談者の希望に応じてシートを配布している。さかいさんは、「専門的な治療を簡単に受けられるようになるのが一番望ましいけれど、不安を取り除くために、日頃から使ってもらいたい」と力強く話した。

 問い合わせは「みんなのがん相談室」(029・222・1219)。平日午前9~午後4時まで。

<アピタル:ニュース・フォーカス・その他>

http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(高室杏子)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

今すぐ登録(春トクキャンペーン中)ログインする

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

春トク_2カ月間無料