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 北海道の利尻島でヒグマの痕跡が見つかって1週間が経った6日、研究者や道の担当者が島を訪れ、現地を調査した。発見された足跡やフンの情報から5日までは島内にいたことが確認された。今のところ利尻富士町と利尻町は駆除を考えておらず、7日の対策会議では「共存」についても話し合われそうだ。

 足跡が島南部の南浜海岸で見つかった5月30日以降、フンや足跡の情報が次々と両町に寄せられた。5日までに届けられた発見場所はフンが5カ所、足跡が2カ所で、大半が島南西部の仙法志地区だった。特に5日に久連(くづれ)自治会館近くの林道で散歩中の人が見つけたフンは「前日にはなかった」という。このことから、少なくともヒグマは5日までは島内にいたことがわかった。

 現地を視察した道立総合研究機構・環境科学研究センターの間野勉・自然環境部長は「上陸したのは大型のオスの成獣1頭で、繁殖相手のメスを求めて海を渡ったのだろう」と推察する。もともと島にヒグマはいない。間野さんは「繁殖相手がいないと気づいた時、オスはどう考えるだろう」と話し、本土に戻る可能性を示唆した。

 島は対岸の稚内市から最短で約20キロあるが、1912(明治45)年5月下旬に、ヒグマの足跡が見つかり、泳いでいるところを島民が見つけて捕獲した記録がある。体重300キロを超える大型のオスの成獣で、上陸は今回とほぼ同じ繁殖時期を迎えるころだった。

 一方で、島民にはヒグマへの「免疫」がなく、動揺は収まらない。両町はヒグマ誘引の原因となる生ごみなどを屋外に放置しないことや、山菜採りや登山の際は鈴やラジオを携帯するよう注意を呼びかけている。クマよけの鈴やクマ撃退スプレーを入荷したホームセンターの店員は「生まれて初めてクマよけの鈴というものを見ましたよ」と話していた。

 両町には、ヒグマを駆除しないよう求める意見が電話やメールで寄せられている。住民に被害が及ぶような状況になれば捕獲も検討するが、島にはトド撃ちのハンターはいてもヒグマを仕留めたハンターはいない。まずはわなを仕掛けて捕獲することを考えている。

 ただ、今後も別のヒグマが島に来ないとも限らない。町の担当者は「恐れるだけではだめ。ヒグマがいることが当たり前の本土のように、ヒグマへの理解を深め、共存の考え方を持つことも大事」という。

 島では7日、道や環境省、森林管理署の担当者らを交えた初の対策会議を開き、現地報告や今後の対応について協議する。(奈良山雅俊)