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 カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法案の衆院審議が大詰めを迎えている。今国会中の成立をめざす与党は8日の内閣委員会で採決に踏み切る構えだが、野党は反発。カジノを成長戦略とすることの是非や賭博を禁じる刑法との整合性など、重要な論点の議論は尽くされていない。

 立憲民主党など野党5党と衆院会派「無所属の会」の国会対策委員長は6日、国会内でカジノ実施法案の対応を協議した。前日に自民党の森山裕国対委員長が記者会見で8日に採決する意向を表明。これに反対することで一致した。共産党の穀田恵二国対委員長は記者団に「ちょこちょこやる話ではない」と述べ、審議が不十分だと訴えた。

 6日の衆院内閣委終了後に開かれた理事会では、野党側がさらに審議を続けるよう要求。野党筆頭理事の阿部知子氏(立憲)は記者団に「経済効果の試算もマイナス面の試算もない」と指摘し、採決を急ぐ与党を牽制(けんせい)した。

 与党が8日の委員会採決を探るのは、今国会での成立を確実にする狙いだ。ただ、採決を強行すれば野党が激しく抵抗することは必至で、与党内には10日投開票の新潟県知事選への影響を懸念する声もある。

 カジノを含むIRの目的について、政府は日本を訪れる外国人旅行者を呼び込む観光資源になると説明。2020年の東京五輪・パラリンピック後の成長戦略の柱に位置づける。安倍晋三首相は1日の衆院内閣委で「観光先進国という新たな国づくりのために全力で日本型IRを実現していきたい」と強調した。

 6日の衆院内閣委。立憲の篠原豪氏は利用者の7~9割が日本人になるとの民間や自治体の推計を示し、「主たる顧客のターゲットは近隣になるのでは」とただした。これに対し、石井啓一国土交通相は「国内外を問わず、多くの来訪者を引きつける魅力ある施設の整備を考えている」とし、正面から答えなかった。

 日本政府観光局(JNTO)の統計では、訪日外国人旅行者は東日本大震災のあった11年の622万人から6年連続で増え、昨年は2869万人と4・6倍になった。審議では「(訪日外国人旅行客は)日本ならではの文化や芸術に価値を感じている」(無所属の会の本村賢太郎氏)として、カジノより自然や文化を生かした観光振興を図るべきだという指摘が相次ぐ。

 そもそもカジノは刑法の賭博罪で禁じられている。野党はその整合性についても追及を強める。

 政府側は「公益性」「公的な管理監督」など賭博を合法化する要件を定めた法務省見解を踏まえ、刑法との整合性はとれていると反論。収益の一部を国庫や自治体に納付する仕組みを「公益性」の根拠とする。

 ただ、法案では戦後初めて「民設民営」による賭博を解禁する。民間事業者が利益を求めれば公益性に矛盾しないか、課題は残る。

 また、ギャンブル依存症の経験者は推計で約320万人いる。カジノができることで、依存症患者が増えるとの不安も出ている。

 法案では対策として、入場回数を「7日間で3回、28日間で10回」に制限し、「6千円」の入場料を設定している。政府側は「重層的かつ多段階的な取り組みを制度的に整備し、万全が尽くされている」と主張。首相は「世界最高水準の規制」と胸を張る。

 一方、先月31日の参考人質疑では、静岡大の鳥畑与一教授(国際金融論)が「年間120回の入場を認めるものとなっており、カジノ漬けを認めるものだ」と批判。専門家の間には、入場料が依存症の抑止効果になるとの科学的根拠はないとの見方もある。(大久保貴裕、中崎太郎)