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 東京電力福島第一原発事故後、立地自治体が条例で原発に独自に課税する動きが広がっている。稼働中の原発の核燃料に課す「核燃料税」の仕組みを変え、今年6月から福島を除く12道県全ての立地自治体で、停止中の原発からも徴税できるようになった。うち4県はさらに廃炉原発に課税できるよう対象を広げた。廃炉への課税収入は年約11億円に上る。

 再稼働が滞る一方、老朽化した原発は廃炉を迫られ、自治体が新たな財源確保に動いている格好だ。

 原発の立地自治体などには1974年制定の電源三法に基づき、交付金や補助金が国から支払われている。核燃料税は、安全対策や産業振興といった名目で福井県が76年に初めて導入した自治体の法定外税。稼働中の原発に核燃料が挿入されるたび、その価格や重量に応じて課されてきた。

 ただ福島事故を受け、国内全ての原発が停止。福井県は2011年11月、原子炉が停止していても炉の規模に応じて課税できる「出力割」の制度を導入した。その後、追随する自治体が増え、宮城県が今年6月、東北電力女川原発に対する出力割課税を始め、福島以外の12道県で停止原発への課税が可能になった。税収額は年間で少なくとも計約150億円に上る。

 福島事故後は安全対策費が増加し、老朽化で廃炉を選択する電力会社も出てきた。福井県は16年度から出力割の対象を廃炉作業中の原発に拡大し、それまでの出力割の半分の税率を課し始めた。同様の変更は福島事故後に廃炉になった原発を抱える佐賀、島根、愛媛の各県に広がった。福井県税務課の担当者は「廃炉作業中も放射能の拡散の恐れはあり、安全対策などが必要だ」と説明する。

 核燃料税は原発を持つ電力会社などが納税し、電気料金が元手となっている。各自治体は核燃料税を導入する際、電力会社に意見を聴いた上で総務相の同意を得る必要があるが、13年の地方財政審議会では「住民や電力料金の負担者の意見を聴く機会も必要ではないか」と、周知が十分でないことや受益と負担のずれを疑問視する声も出ていた。

 福島事故前には全国で54基の商用原発があったが、事故後に全てが停止。現在までに9基が再稼働し、19基の廃炉が決まった。(桑原紀彦、吉田拓史)

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 〈核燃料税〉 住民税など地方税法に定める税目以外に、自治体が条例で独自に課すことができる法定外税の一つ。稼働原発に核燃料が挿入されるたびに課す「価額(かがく)割」や、稼働の有無にかかわらず原子炉の熱出力に応じて課税する「出力割」などがある。原発が立地する全13道県にあったが福島県は2012年度に失効した。導入には総務相の同意が必要。核燃料税が不同意になった例はない。