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【アピタル+】患者を生きる・スポーツ「握れぬラケット」(TFCC損傷・テニスひじ)

 テニス選手に目立つ「TFCC損傷」や「テニスひじ」と呼ばれる故障には、どんな治療法があるのか。日本テニス協会医事委員会の別府諸兄委員長に聞いた。

TFCC損傷とテニスひじ、違いは

――TFCC損傷とはどんなものですか。

 テニス選手の手関節で、故障が多いのは手首の小指側の部分です。「三角線維軟骨複合体(TFCC)」という靱帯(じんたい)や軟骨のような軟らかい組織でできた部分があります。手首の要になる部分で、テニスの場合はフォアハンドでトップスピンをかけてボールを打つ動きでここに繰り返し大きな負担がかかり、傷めてしまうことがあります。

 テニス以外でも、手をついて転んだり、空手や相撲、体操などで手に力が加わったりしても発症します。

写真・図版

 

――テニスひじとはどんなものですか。

 正式には「上腕骨外側上顆炎(じょうわんこつがいそくじょうかえん)」といいます。やはり、テニスの特にバックハンドでボールを打つ力が繰り返しかかることで、ひじの関節の外側に痛みが生じるようになります。テニス選手のほか、中高年のテニス愛好家に目立ちます。

――テレビで錦織圭選手らトップレベルの選手の試合を見ていると、パワフルなプレーが目立ちます。そのことも故障に影響するのですか。

 そうですね。ストリングやラケットなどが進化し、現在のテニスはストロークにトップスピンをかけるのが主体になってきました。強い回転をかけることでボールの速度は速くなります。また、スピンをかけるとボールの軌道も変わります。ラケットには衝撃を吸収しやすい「スイートスポット」と呼ばれる部分がありますが、プロ選手でもすべてここでボールを打ち返すのは難しくなっており、手やひじに大きな負担が繰り返しかかりやすくなってきています。

 

治療は保存療法と手術

――TFCCの治療にはどのようなものがありますか。

 まずは手関節にかかる負担を減らすため安静にする、炎症を抑えるステロイド剤を関節に注射したり、サポーターで関節が動かないよう固定したりする保存療法があります。痛みが長く続き、悪化すれば手術が必要になることもあります。

 手術は、前腕部の尺骨の一部を切って短くします。尺骨を数ミリ短くすると、尺骨の骨につながる靱帯が下側に引っ張られて、手関節が安定するようになります。そうするとTFCCへの負担が減り、痛みが治まります。靱帯が切れている場合は縫合することもあります。

――テニスひじの治療はどうですか。

 一般的に、保存療法で90%は6カ月以内に痛みが改善しますが、10%は慢性化してなかなか治らないことがあります。その場合、直接手術するか、あるいは関節鏡を入れて変性した組織の切除などの手術をすることがあります。また、近年は「PRP(多血小板血漿(たけっしょうばんけっしょう)療法)」と呼ばれる新しい治療法も使える可能性があります。注射で患者さんの血液を採取し、特殊な方法で成分を濃縮した後に患者さんに注射し直す方法で、再生医療の一種です。

 

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<アピタル:患者を生きる・スポーツ>

http://www.asahi.com/apital/special/ikiru/(聞き手・小堀龍之)