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 第22回手塚治虫文化賞の贈呈式が7日、東京・築地の浜離宮朝日ホールであった。受賞記念対談も開かれ、「ゴールデンカムイ」で今年のマンガ大賞を受賞した野田サトルさんと、同作のアイヌ語監修を務める中川裕・千葉大教授が「この現場がスゴイッ! ゴールデンカムイ創作秘話―野田サトルの仕事場から―」と題して語り合った。進行は同作の担当編集者・大熊八甲さん。主なやりとりは以下の通り。

 大熊 本日は大変光栄な場をありがとうございます。

 中川 私のようなアイヌ文化に関わっている人間からすると、これまで世間の関心が少なかったアイヌ民族にスポットライトをあててくれる原動力になった作品です。作品を描くにあたって、取材はどれぐらいされましたか?

 野田 連載を始める前に1年ぐらいですかね。連載の合間合間にも取材しながらです。

 大熊 野田先生はフィールドワークが本当に得意です。

 野田 自分が何者かは言わずに取材をしています。

 中川 特に印象に残った取材は?

 野田 樺太アイヌの血を引く猟師さんが子鹿を狩るのについていきました。子鹿をその場で解体して脳みそを食べたのですが、味のないあたたかいグミみたいな感じでしたね。一緒にいたアイヌの人たちの方が引いていたぐらいです。

 中川 最初に野田さんと大熊さんにお会いした時、ほぼ完成した第1話の原稿を見せてもらいました。山に行くときに身につけた衣装や弓を引く絵、よくここまで調べて描いたなと。これ、全部がそろった写真はたぶんないと思うんです。野田先生が取材を組み合わせてつくった。もしアイヌの教科書をつくるなら、この絵を載せたいぐらいの絵です。

 野田 中川先生にアイヌ語を監修していただいているほか、ロシア語やそれぞれの方言に監修者が付いています。薩摩弁は80代のおばあちゃんが翻訳してくれているんです。

 中川 私は監修ですが、いつもできあがったものを直前に見るので、この作品がこの先どうなるかは分かりません。でもこの作品が起こしたインパクトは非常に大きいので、我々はこの衝撃をどうやってつなげるかを考えていきたい。

 野田 「ゴールデンカムイ」を描くにあたって北海道のあちこちに行ってアイヌの方々に話を聞きました。もらった注文は「かわいそうなアイヌにはしないでくれ、強いアイヌを描いてくれ」ということだけでした。できるだけ忠実であろうと、フェアに、慎重に描いているつもりです。

 大熊 こういった熱いプロフェッショナルな方々と作っています。今日はありがとうございました。