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 「なぜ、無差別だったのか。なぜ、踏みとどまることができなかったのか」。東京・秋葉原の無差別殺傷事件で重傷を負った湯浅洋さん(64)は問い続けてきた。事件から8日で10年。初めて発生時間帯に現場に足を運ぶ。

 昨年5月、島根県浜田市から1千キロ以上離れた青森市まで、2日がかりで車を走らせた。広がる平野に川が流れるのどかな町に、加藤智大(ともひろ)死刑囚(35)の実家はある。両親と話したい。インターホンを鳴らしたが、反応はなかった。加藤死刑囚が通った中学校や高校も見に行った。

 10年前のあの日は日曜日だった。タクシー運転手の仕事中、歩行者天国の入り口前の交差点に赤信号で止まっていた。フロントガラス越しに、正面から現れたトラックが歩行者天国に突っ込み、次々と人をはねるのが見えた。トラックは自分のタクシーの横を通り過ぎ、後方で止まった。

 タクシーを降りて倒れた人に駆け寄り、介抱に当たっていた時だった。「ドン」。背後から抱え込まれるように何かがぶつかった。振り返ると、警察官を背後からダガーナイフで刺す男の後ろ姿が見えた。自分の脇腹には血がにじんでいた。警察官の前に、自分が刺されていたことに気付いた。ダガーナイフが肺を貫通していた。病院への搬送中に失った意識が戻ったのは、4日後だった。

 退院後も突然汗がふき出し、頻…

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