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 6月末で閉店する名古屋・栄の百貨店「丸栄」。売り場の外でも、顧客からの信頼を大事に働いてきた人たちがいる。

 売り場を通さずに商品を扱い、客に直接販売することを外商という。顧客との信頼関係で成り立ち、目にすることの少ない仕事だ。

 「この部屋は、ほとんど石本さんに作ってもらったの」。名古屋市の栗本加代さん(76)が目を細めた。居間にあるのは絵画、磁器の人形、ペルシャじゅうたん……。丸栄外商部の課長、石本勝哉さん(49)の薦めで気に入り、購入したものばかりだ。

 「最高の外商さん」と栗本さんが信頼を寄せるのには、理由がある。石本さんが外商に着任して間もない15年ほど前、栗本さんは大好きな人形の部品が欠けて悲嘆に暮れていた。何とかしたいと思った石本さんは、人形を持ち帰って修理し、復元した。栗本さんは「この人は信用できる」と思うようになった。

 欧州調の家具が欲しかった栗本さんは10年ほど前、丸栄の取引先が開いた展示販売会に出向くために大阪に行った。駅に降り立つと、改札外に石本さんの姿が。1人で買い物する栗本さんを気遣って迎えにきていた。「大切なお客様をご案内しなければ。余計なことを、と叱られたら名古屋に戻るつもりでした」

 栗本さんがイタリア製の飾り棚を買った後も、石本さんは倒壊防止の手立てを講じた。いま、棚には2人で集めたスペイン製「リヤドロ」やドイツ製「マイセン」の磁器人形が並ぶ。

 高額な美術品や宝飾品を扱うことの多い外商部員。丸栄にはバブル期に100人以上いたが、今は13人だ。それでも年数十億円を稼ぎ、会社売上高の4分の1近くを占める。顧客の求めを察知し、良い商品を提案。催事に付き添って買い物も支援する。石本さんは、どれも欠かせないという。「お客様の人生に寄り添ってきた。こちらが感謝する側なのに『ありがとう』の言葉を頂くことがうれしい」

 外商は店舗外で営業してきたので、丸栄の閉店後も仕事を続ける。(斉藤明美)