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 三重県立白山高の家庭科教諭、川本牧子さん(40)は小学生の時、白球を追う野球少女だった。現在は野球部長として高校野球に関わるが、大好きな野球をあきらめた時期もあった。

 父親は少年野球チームの監督。その影響で小学3年から野球を始めた。周囲に女子はおらず、「みんなが坊主のなか、帽子を取ると一人だけショートカット。恥ずかしかった」。中学でも野球をしたかったが女子の募集はなく、ソフトボール部に入った。

 高校では野球に関わりたい、とマネジャー志望で野球部の見学に行った。でも、「女子マネジャーはとっていない」と断られ、「男に生まれたかった」と何度も思った。甲子園に行きたい、野球がしたいという夢はあきらめた。

 名古屋市の女子大に進学し、野球からは離れた生活を送っていた。再び野球の道に戻ったのは、教員になってからだった。

 新人として、いなべ総合に赴任した1年目、川本さんはソフトボール部の顧問をしていたが、別の指導者が赴任し、交代することに。野球が好きだと周囲に常々話していた川本さんに、野球部顧問の打診があった。あこがれだったベンチに座り、「ああ、ベンチに入れた」。喜びがあふれた。その後、転勤した名張西でも野球部長を務め、7年前に赴任した白山でも部長になった。

 高校3年の夏までという限られた時間の中で懸命に練習し、プレーするのが高校野球の魅力だと思う。先発メンバーからは外れても、練習でボールを拾った後、土を払って渡す選手がいる。「そんなちょっとした気遣いとか、気配りができるようになる。野球は人間力を育ててくれる」

 今は3児の母。毎日練習に顔を出すことはできないが、選手やマネジャーにグラウンド内外で声をかける。「グラウンドではしっかり野球に集中してほしい」と、監督には言えない弱音を聞き出す。部の経理を担当したり、県高野連などに出す書類を作ったり、事務作業もこなす。

 白山は昨夏の三重大会で11年ぶりの勝利を収めた。今春の県大会は8強に進出。初の甲子園へ、急成長しているチームの一つだ。

 2017年の選抜大会から、甲子園ではようやく女子部員が練習に参加できるようになった。

 白山の部員たちに「顧問としてなら、女性でも甲子園の土を踏めるかもしれない」と言うと、「自分たちが先生を甲子園に連れて行きます」と返してくれた。球児たちと二人三脚で夢を追いかける。(甲斐江里子)

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