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 「容疑者は表情を変えず、ほぼ無言で、何度も被害者の男性に刃物を振り下ろしていた――」。東海道新幹線内で、刃物を持った男が3人を殺傷した事件。凶行があった12号車に乗り合わせ、110番通報した東京都内のフリー編集者の稲本義彦さん(55)は10日未明、下車した京都駅で現場の状況を語った。

 後方から「キャー」という叫び声が聞こえ、立ち上がって後ろを振り向いた。出入り口の自動ドアの前あたりの通路で、亡くなった男性と容疑者が立ったまま向きあい、声を出さずにもみ合っていた。容疑者の顔は無表情だった。

 容疑者は黒いTシャツを着て、おとなしい感じに見えた。菜切り包丁のような刃物で上からたたき切るように、男性の上半身を何度も切りつけた。

 同じ12号車にいた乗客たちは前方の11号車に逃げた。押されて、倒れる女性も見えた。自分もデッキに出て、110番通報。11号車の人たちも逃げ、誰もいなくなった。車掌が「シートの座面を外し、盾のようにしてください」と言い、多くの人が座面を盾にしていた。

 その後、11号車と12号車の間のデッキに戻り、12号車の様子をのぞくと、通路の真ん中あたりで男性が仰向けになって倒れていて、馬乗りになった容疑者が無表情で何度も刃物を振り下ろしていた。被害者は血だらけで意識があるようには見えなかった。車掌がトランクを盾に容疑者に近づき、説得しているようだったという。

 「みんなパニックになって、あわてた。まさか、こんな体験をするとは夢にも思わなかった。怖い」