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 いったん開いた「再審の扉」が、再び閉じられた。52年前に静岡県で起きた一家4人殺害事件をめぐり、静岡地裁と東京高裁の判断を分けたのは、DNA型鑑定の信用性への評価だった。一方、死刑確定後も再審請求を続けてきた袴田巌さん(82)の釈放は引き続き認められた。異例の経過をたどってきた審理の舞台は、最高裁に移る。

 再審請求審で最も主要な争点は、事件当時の犯人の着衣とされるシャツなどにある血痕のDNA型鑑定だった。これについて、静岡地裁と東京高裁は正反対の評価を下した。

 鑑定の対象となった衣類は約半世紀前のもので、事件後にはみそ漬けにされていた。2008年に終了した第1次再審請求でもDNA型鑑定が試みられたが、鑑定不能とされていた。そのなかで、弁護側が推薦した本田克也・筑波大教授(法医学)は自身が考案した方法で鑑定を試みた。

 本田教授が取ったのは、衣類から血液だけを抽出するため、血液細胞を集める作用がある試薬を使う方法。この結果、シャツから袴田さんとは別人のDNA型を検出し、ほかの衣類にも、被害者以外の血液が付いていると結論づけた。

 地裁はこの手法を評価したが、高裁は「一般的に確立した科学的手法とは認められない」と疑問を呈した。本田教授のほか、この手法で血液に由来するDNA型鑑定に成功した例が報告されていないことや、試薬の使用は不適切という鈴木広一・大阪医大教授の報告書も踏まえ、「裁判で証拠として用いるには、科学的原理の信頼性が不十分だ」と判断した。

 DNA型鑑定は精度が向上し、再審請求事件で大きな役割を果たしている。10年には「足利事件」の再審無罪につながり、「東京電力女性社員殺害事件」でも、元受刑者の冤罪(えんざい)を晴らすことに貢献してきた。その一方、最高裁司法研修所が12年12月に公表した研究報告では「個別識別能力はすでに究極の域に達している」としたうえで、「過信してはならない」と指摘。他の証拠と照らし合わせ、判断する重要性を説いている。高裁決定も、この報告を踏まえた内容といえる。

 ただ、新しい技術を評価すべきだ、という意見もある。指宿信・成城大教授(刑事訴訟法)は「高裁決定のような鑑定の見方だと、古い証拠品のDNA型鑑定に新しい手法を導入することが困難となってしまう」と話す。(岡本玄、北沢拓也)

■非公開の審理、釈然としな…

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