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 昨年6月に第1子の女児を出産した柔道女子の松本薫(ベネシード)が1年10カ月ぶりの実戦に臨んだ。10日に福岡県久留米市であった全日本実業団体対抗大会。「ママでも金」を目標に、30歳で再出発を切った。

 銅メダルを獲得したリオデジャネイロ五輪以来の試合に、松本は戸惑いを隠さなかった。「以前なら『始め』の声で相手に圧力をかけていたのに、それを最初は忘れてしまっていた」

 それでも1戦目は横四方固め、2戦目は小内巻き込みで鮮やかに一本勝ち。「娘と過ごす時間を減らして試合に出ているから、中途半端な戦いはできないと思った。スイッチが入った」。2戦とも、約1分で決着。体重別3人制で争う女子2部でチームは3回戦で敗れたが、自身は2戦2勝でロンドン五輪金メダリストの貫禄を見せた。

 母と選手の両立に苦労はある。母校の帝京大を練習拠点にしているが、1歳の娘を保育園に預けているため練習できるのは夕方の2時間が限度。「限られた練習で悔しい時もあるし、後悔しながら迎えに行く日もある」。朝は夫の出勤前に自転車で坂道を走って体力をつけ、夜は娘を寝かしつけた後に柔道日記をつづる。「自分でも、いい年してよく柔道やるなって思う。でも、柔道も子育ても、やりたいから両方やるんです」

 女子57キロ級は昨年の世界選手権で準優勝した芳田司(22)=コマツ=ら力のある若手が出てきた。東京五輪の代表争いに割って入るには、松本に時間的な余裕はない。11月の講道館杯で結果を残し、その後のグランドスラム大阪で国際大会に復帰できるかが勝負になる。「自信はない。でも、1%でも可能性があれば、それにかけていきたい」

 まな娘を東京に置き、初めて3日も離ればなれになって臨んだ復帰戦。「娘が泣いていると聞いて涙が出そう。帰ったらギュッとして、チューします」。ママの顔で会場をあとにした。(波戸健一)