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 民泊のルールを定めた「住宅宿泊事業法」(民泊新法)が15日施行される。東京都内各自治体への取材では、未受理も含む届け出数は計918件。内訳は自治体によって大きく異なる。背景には、立地や参入を厳しくした各自治体の条例の存在などがありそうだが、多くの民泊は違法に営まれてきた経緯もあり、自治体は更なる対策にも力を入れる。

 朝日新聞が11日までの届け出状況を都内の各自治体に聞いてまとめたところ、上位には著名な観光地を抱えていたり、交通の便が良かったりする区部の自治体が多く名を連ねた。

 それぞれ97件と71件の届け出があった台東、墨田両区。台東区には上野や浅草、墨田区には東京スカイツリーや両国国技館がある。台東区の担当者は「海外で知られた場所も多いためでは」。51件が届けられた港区の担当者も、羽田空港にモノレールでつながる浜松町駅や、新幹線が止まる品川駅があることを踏まえ、「観光、移動とも便利で、届け出につながっているのだろう」とみる。

 一方、同じ都心でも千代田区は11件にとどまった。住居のほとんどが集合住宅で、トラブル時の影響の広がりやすさを懸念。家主の居住か、常駐または短時間に駆けつけられる管理者の設置を開業の最低条件とする条例を作った。上村昌弘・民泊指導課長は「都内でも厳しめだが、住民と宿泊者の安全・安心を最優先に考えた」。中央区も、営業は全域で土曜正午~月曜正午に限るとした条例を制定。届け出は9件となっている。

 多摩地域も少なめだ。都などによると、全市町村で計60件ほど。都心からの距離が影響したとみられる。八王子市の橋本光太郎観光課長は「市街地での宿泊の受け皿というより、のどかな地域で農業などを楽しめる体験型の民泊が増えればとは思うが、まだ先の話だ」と話す。(平岡妙子、大賀有紀子)

「ヤミ民泊」警戒し対策 各自治体

 「ヤミ民泊」の継続を警戒し、自治体は対策にも工夫を凝らす。

 全国に先駆け、2016年から国家戦略特区での民泊制度を導入する大田区。昨年度、区内で実施した民泊の実態調査によると、のべ627件の民泊があり、うち約6割が許認可無しと判明した。区はこれらの民泊の事業者に、適法な運営への転換か廃業をするように指導中。担当者は「ゼロを目標に取り組みたい」。

 新宿区は警察との連携に力を入れる。11日には区内4署と連携協定を締結。15日以降はヤミ民泊を見つけた場合、行政指導や立ち入り検査などで改善を求め、違法営業が続けば警察への刑事告発も検討する。海外サイトを使って利用客を募ることも想定し、吉住健一区長は「警察のサイバー部門と連携した取り締まりも進めたい」と話す。

 住民情報を重視する自治体もある。渋谷区では独自にコールセンターを設けるとともに、職員が各町会を回り、ヤミ民泊に関する情報提供を呼びかける。担当者は「潜在化防止には地域の目が重要。ぜひ情報を寄せてほしい」と話す。(川見能人、岡雄一郎)

新法に基づく民泊の自治体別の届け出数

●50件以上

新宿、台東、渋谷、豊島、墨田、中野、世田谷、港

●30~49件

杉並、板橋

●10~29件

江戸川、品川、北、文京、大田、目黒、千代田、葛飾、足立、町田

●1~9件

中央、練馬、荒川、江東、八王子

※11日時点(町田は8日時点)。未受理も含む。八王子と町田を除いた多摩地域と島部の自治体別件数は届け出先の都が明らかにしていない。

     ◇

 (住宅宿泊事業法〈民泊新法〉) 住宅の空き部屋などを使い、宿泊事業を営む際のルールを定めた法律。自治体への届け出が受理されると開業でき、営業日数は年180日まで▽苦情対応や宿泊者名簿の作成は事業者の義務とする、などの決まりがある。法律上無許可の「ヤミ民泊」の横行や、増加する近隣トラブルに対応する必要性が制定の背景にある。ルールに沿った宿を増やし、増加する訪日外国人らの宿泊需要に応える狙いもある。