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 トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長は12日、史上初の米朝首脳会談をシンガポールで行い、米朝関係の改善を目指す共同声明に署名した。トランプ氏は北朝鮮に体制保証を与え、正恩氏は朝鮮半島の「完全な非核化」を約束することを共同声明で確認した。しかし、いつまでに、どうやって非核化を実現するのかの具体策は示さず、米朝の高官が引き続き協議を続けることを決めるにとどめた。また、トランプ氏が実現を目指していた朝鮮戦争の終結も盛り込まれなかった。

 両首脳はこの日、午前9時過ぎから会談を始めた。トランプ氏が冒頭、「私たちはこれから素晴らしい議論をして、大いなる成功を収めるだろう」と語ると、正恩氏は「ここまでくるのは容易ではなかった。私たちの足をひっぱる過去があり、誤った偏見と慣行が私たちの目と耳をふさぐこともあったが、そのすべてを乗り越えてここまで来た」と述べ、両氏は握手を交わした。

 2人は38分間の単独会談を行い、両国の高官を交えた拡大会合、実務者も加えたワーキングランチを行った。首脳会談の時間は計4時間に及び、会談後に2人で庭園を歩いた後、共同声明の署名式に臨んだ。

 トランプ氏は署名式で、「我々は期待をはるかに超えることをやり遂げた」と自賛。正恩氏は「世界はおそらく重大な変化を見ることになるだろう」とトランプ氏に謝意を表した。

 両首脳は共同声明で、「歴史的な首脳会談」と位置づけたうえで、両国の相互信頼が朝鮮半島の非核化を促進すると確認。①米朝の両国民が平和と繁栄を希求する意思に基づき、新しい米朝関係を構築する②朝鮮半島の永続的かつ安定的な平和体制の構築に共同で努力する③4月27日の板門店宣言を再確認し、北朝鮮が朝鮮半島の完全な非核化に向け努力することを約束する④身元確認されたものを含め、戦争捕虜や行方不明兵の遺骨の回収に尽力する――の4点で合意した。

 トランプ氏は、合意を実現させるため、ポンペオ米国務長官と北朝鮮高官による協議を近く始めることを明らかにした。

 トランプ氏は会談後の記者会見で、「我々のかつてない会談は、真の変化が本当に可能であることを証明した」と述べ、敵対関係にある米朝が関係改善を目指す姿勢は示した。

 しかし、最大の焦点である北朝鮮の非核化をめぐっては、北朝鮮が4月の南北首脳会談で約束していた「完全な非核化」の再確認にとどまった。核兵器やミサイルをどう廃棄・搬出するのか、その期限、査察の方法など具体策は示されなかった。過去の米朝合意もこうした具体的な措置で行き詰まった歴史がある。

 米国が譲れない条件だと主張してきた北朝鮮の「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)も共同声明に盛り込まれなかった。「完全な非核化」の定義があいまいなまま、北朝鮮の非核化が実際に進むのかは不透明なままだ。

 トランプ氏は北朝鮮の体制保証に伴う在韓米軍の扱いについて、「当面は減らすつもりはない」と語った。しかし、将来は削減・撤退させたいとする持論も展開し、「(北朝鮮と)交渉中に『戦争ゲーム』を行うのは不適切だ」と指摘。アジアの安全保障維持のため歴代政権が続けてきた米韓合同軍事演習にも消極的な姿勢を示した。

 トランプ氏は12日夜に帰国の途に就いた。正恩氏を乗せたとみられる飛行機も同日夜にシンガポールを離れた。(シンガポール=園田耕司、武田肇)

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米朝首脳会談で合意された主な内容

・トランプ米大統領は北朝鮮に安全の保証を与え、金正恩委員長は朝鮮半島の完全な非核化に向けた責務を再確認

・米朝双方の国民の平和と繁栄を希求する意思に基づき、新しい米朝関係の構築を約束

・朝鮮半島の永続的で安定的な平和体制の構築に尽力

・北朝鮮と韓国による「板門店宣言」を再確認

・朝鮮戦争の捕虜や行方不明兵士の遺骨の回収と返還に取り組む

・会談結果の実行のため、ポンペオ米国務長官と北朝鮮高官による交渉をできる限り早く開催

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