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 奈良県生駒市の映画監督・溝渕雅幸さん(56)が、高知県四万十市で在宅医療に注力する医師を題材に、ドキュメンタリー映画「四万十 いのちの仕舞(しま)い」(1時間48分)を制作した。映画は全国で公開され、23日からイオンシネマ高の原(京都府木津川市)でも上映が始まる。

 溝渕さんが撮影した映画の序盤。自宅のベッドに横たわる90代の女性が、内科医・小笠原望(のぞみ)さん(66)に打ち明けた。

 「先生、入院せんとね、家でね、ことんと仕舞いたい」。小笠原さんは「うん、うん」と親身に耳を傾ける。女性はこの数カ月後に息を引き取った。

 小笠原さんは四万十川のほとりで診療所を営みながら、在宅医療に力を入れる。「最後まで食べて、話をして、苦しまず、なじみの人たちの中で」。地元の人たちが「いい仕舞い」と呼ぶそんな最期を患者に迎えてもらうためだ。

 溝渕さんは映画を2016年11月下旬から約10カ月かけて撮影した。連日のように診療所からの往診を続ける小笠原さんと高齢の患者たちの姿を、四万十川の四季の移ろいを背景に描く。

 溝渕さんは大学を中退後、大阪の新聞社で記者として4年ほど事件や事故を取材した。現在は映像制作の現場でフリーで働き、テレビのドキュメンタリーや企業CMの撮影、演出を30年近く手がけている。

 1995年にあった阪神大震災の取材をきっかけに、人の死について考えるようになった。「取材を通じて事件や事故による死にたくさん触れてきた。その一方で、老衰や病気といった『身近な死』について、自分はほとんど知りませんでした」

 以来、終末期医療に取り組む病院に取材を重ねた。劇場初公開作品となった前作「いのちがいちばん輝く日」でも滋賀県近江八幡市のホスピスで、終末期を過ごす患者と家族をドキュメンタリーで描いた。

 溝渕さんは「死を、リアリティーを持って感じてほしい」と話す。「四万十」の撮影中、小笠原さんの患者が息を引き取る瞬間に立ち会った。

 「他人や身近な人の死を知ることで、自分の生についてより真剣に考え、日々を大切に生きることができるのではないでしょうか」と溝渕さん。今後も同様のテーマで、ドキュメンタリーの制作を続ける予定だ。

 イオンシネマ高の原では23日に溝渕さんと緩和医療に詳しい四宮敏章・奈良県立医大付属病院緩和ケアセンター長、24日には溝渕さんと小笠原さんのトークショーを、いずれも午後1時からの本編上映後に開く予定。問い合わせはイオンシネマ高の原(0774・71・9545)へ。

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http://www.asahi.com/apital/medicalnews/focus/(根本晃)